みなさん、こんにちわ!
株式会社福島屋代表の上田です。
「築年数の古い物件を買おうとしたら“既存不適格”と言われたけど…それって違法!?」
不動産購入や売却を考えるとき、「既存不適格」や「違法建築」といった言葉に戸惑う方は多いはずです。とくに建築の専門知識がないと、それがどれほどのリスクなのかが分からず不安になると思います。
そこで本日は、「既存不適格」と「違法建築」の違いを、建築基準法の視点から話してまいります。
建築基準法では、建物が建てられた時期とその後の法改正の内容によって、建物の「適法性」が変わることがあります。思わぬトラブルを防ぐためにも、確認すべき“見るべきポイント”をしっかり押さえておくことが大切です。
目次
既存不適格とは
建築当時は合法、でも今の法律には合っていない建物
「既存不適格」とは、建てられた当時は合法だったが、その後の法改正によって現在の基準に合わなくなった建物を指します。
例えば
- 昔は容積率300%だったが、今は200% → 現在の基準オーバー
- 敷地に接道義務がなかったが、法改正で「4m道路接道」が必要になった
つまり、「もともとルール違反ではない」ので違法ではありません。
建築基準法により、取り壊しを命じられることは基本的にない
既存不適格物件は、「違法ではない」ため行政から是正命令や取り壊し命令を受けることは原則ありません。
ただし注意点があります。
- 再建築時には、今の法律に合わせて建て直す必要がある
- 増改築にも制限がある(現状より建物を大きくできないなど)
違法建築とは
初めから違反している建物、それが「違法建築」
「違法建築」とは、建築当初から建築基準法や都市計画法に違反して建てられた建物です。
よくある例
- 接道義務を満たしていない土地に勝手に建てた
- 建築確認を取らずに増築した(無許可増築)
- 容積率や建ぺい率をオーバーしている
これは明確に法律違反であり、重大な場合には是正指導や取り壊し命令の対象になる可能性があります。
住宅ローンや売却に大きな影響
- 金融機関が融資を断るケースが多い
- 将来的に買い手が見つかりにくい
- 賃貸やリフォームに制限が出る場合もある
既存不適格と違法建築の違い
比較項目 | 既存不適格 | 違法建築 |
---|---|---|
合法性 | 合法 | 違法 |
建築時点 | 合法だった | 違法だった |
現行法との関係 | 合わないが経過措置あり | 違反状態 |
増改築・建替 | 制限あり(原則可) | 制限あり/不可の場合も |
金融機関の対応 | 融資可能な場合あり | 融資NGが多い |
建築基準法から見る「見極めポイント」
接道義務(建築基準法第43条)
- 幅員4m以上の道路に2m以上接している必要あり
- 接道していないと原則再建築不可
既存不適格であれば、「現状の建物はOK」でも建て替えはNGになることがあります。
用途地域と容積率・建ぺい率(建築基準法第52~53条)
- 都市計画区域内では、用途地域に応じた制限があります
- 違法建築の場合、容積率超過や建ぺい率違反がよく見られます
建築確認の有無
- 違法建築は建築確認を得ていない場合が多い
- 「増築したけど申請してない」ケースも要注意!
実際のトラブル事例と対策
既存不適格物件をリフォームしようとして、工事に制限がかかった
建築当時は合法だったものの、現在の基準に適合していないため、増築や間取り変更ができず、予定していたリフォーム計画を大きく見直さざるを得なくなった。
対策ポイント
- 事前に「建築確認済証」や「検査済証」の有無を確認する
- 不動産会社任せにせず、行政窓口や建築士に相談する
- 書類がない場合、法務局や役所の建築課で情報収集
住宅ローンが通らない理由
住宅ローンは、物件を担保にお金を貸す仕組みです。そのため、担保価値が低かったり、法的なリスクがある物件には、銀行は融資を出しません。とくに「既存不適格」や「違法建築」の場合、審査に通らないことが多くなります。
金融機関はどうやって見抜く?
銀行は、ローン審査の際に以下のような方法で物件のリスクをチェックしています。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
建築確認済証・検査済証の提出 | 建物が建築基準法に基づいて建てられたか確認します |
謄本・図面・法務局情報 | 土地や建物の所有関係・面積・用途・構造などを確認 |
公図・地積測量図 | 接道義務を満たしているか、敷地形状に問題がないか確認 |
役所調査(法令調査) | 建築課や都市計画課で、建ぺい率・容積率・用途地域などを調査 |
現地調査 | 実際に建物を確認し、無許可の増築や用途変更がないかチェック |
これらの情報から、再建築の可否や法令適合性を判断し、ローンが通るかどうかを決めています。
逆に言えば、住宅ローンの事前審査を受けることで、その物件が既存不適格や違法建築に該当するかどうかを見極めることも可能です。
まとめ|判断基準は「建築時の合法性」と「現在の法とのズレ」
「既存不適格」と「違法建築」は、見た目だけではわからないことが多く、将来的な資産価値や使い方に大きな影響を与える重大なポイントです。
項目 | チェックポイント |
---|---|
建築当時の法令 | 合法か、違法だったか |
現在の法令との関係 | 適合しているか、不適合か |
書類の有無 | 建築確認済証・検査済証の有無 |
建て替えの可否 | 接道・容積率・用途地域の確認 |
売却・融資 | 金融機関の対応状況や買い手ニーズ |
「古いけど安いからお得」と思って購入しても、後になってリノベーションや建て替えが難しいことが判明するケースは少なくありません。購入前に、その物件で本当に自分の目的が達成できるかどうか、しっかり確認することが重要です。