皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
相続した空き家や土地を売却する際には、税金や手続きのことが気になるものです。
「確定申告は必要なのか」「どんな流れで行うのか」など、不安や疑問を抱く方が多く見られます。
相続不動産の売却には、譲渡所得税や住民税の計算、経費の整理、控除の適用判断など、想像以上に専門的な知識が必要です。
そこで本日は、相続した不動産を売却するときの確定申告の流れと必要書類を中心に、はじめての方にもわかりやすく話してまいります。
目次
相続空き家を売ったら確定申告は必要?
結論から言えば、相続した空き家や土地を売却して利益(譲渡益)が出た場合は確定申告が必要です。
給与所得者(会社員)や年金受給者であっても、不動産売却による所得があれば申告義務が生じます。
一方、売却で損失(赤字)が出た場合は申告義務はありませんが、他の不動産の譲渡所得と損益通算できるケースもあるため、結果的に申告した方が有利になる場合があります。

なぜ確定申告が必要になるのか
相続不動産を売って得た利益は、税法上「譲渡所得」として扱われます。
計算式は次の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)
ここでいう「取得費」は、もともと土地や建物を購入したときの金額を指し、相続の場合は被相続人(亡くなった方)の購入費をそのまま引き継ぎます。
ただし、建物は購入金額から使用期間に応じた減価償却費を差し引いた残額が取得費となります。
木造住宅では法定耐用年数(22年)を超えていることがほとんどで、さらに被相続人の購入金額の資料が残っていないケースも多いため、相続不動産では建物の取得費を計上できないことが一般的です。
取得費が不明な場合は、概算取得費(売却額の5%)として計算することになります。
また、売却の際にかかった仲介手数料・登記費用・測量費などは「譲渡費用」として経費計上できます。
申告に必要な主な書類
確定申告では、売却や相続に関する証拠書類を揃えることが重要です。
必要書類一覧
- 不動産の売買契約書
売却金額や契約日を確認するために必要です。 - 仲介手数料・測量費・所有権移転登記費用などの領収書
譲渡費用(経費)として計上する際に使用します。 - 登記簿謄本(全部事項証明書)
所有権移転の記録があるもので、売却が完了したことを証明します。 - 固定資産税評価証明書
土地や建物の評価額を確認するために必要です。 - 相続関係書類(遺産分割協議書・戸籍謄本など)
誰が相続し、売却益が誰に帰属するかを証明します。 - 取得費を示す資料(購入契約書・領収書)
土地や建物の取得価格を確認するために使用します。 - 相続税申告書控え(取得費加算の特例を使う場合)
相続税の支払額を確認し、取得費に加算できる部分を証明します。 - その他の特例適用に必要な書類
例:相続空き家3,000万円特別控除の「被相続人居住用家屋確認書」など。

確定申告の流れ
はじめての方でもわかりやすいよう、確定申告の手順を順番に整理します。
① 売却額と経費を整理する
売却金額・仲介手数料・測量費・登記費・解体費などを一覧にまとめ、正味の利益(譲渡益)を把握します。
② 譲渡所得を計算する
前述の計算式に当てはめて利益を算出します。
利益が出た場合、その金額に応じて課税されます。
| 所有期間 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡) | 約39.63% |
| 5年超(長期譲渡) | 約20.315% |
※「所有期間」は、被相続人が取得した日から起算します。
③ 申告書を作成する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、PCやスマホから簡単に作成できます。
自動で譲渡所得や税額を計算してくれるため、初心者にも安心です。
④ 書類を添付して提出する
作成した申告書に、売買契約書や領収書などの証明書類を添付します。
e-Taxを利用する場合は、PDFや画像データの添付でも対応可能です。
⑤ 納税を行う
税金の納付は申告期限(3月15日)までに行います。
納付方法は以下の通りです。
- 金融機関窓口
- 口座振替
- クレジットカード納付
- e-Tax(電子納付)

相続税を支払った場合の「取得費加算の特例」
相続税の申告を行っている場合、相続した財産にかかる相続税のうち一定額を「取得費」に加算できる制度があります。
これを「取得費加算の特例」といいます。
この特例を使うことで、譲渡所得(課税対象額)を減らすことができ、結果的に税金の負担が軽くなります。
ただし、
- 相続開始から3年10か月以内の売却に限られる
- 相続税額の一部しか加算できない
など、適用条件が細かく決まっているため、税理士に確認のうえ計算するのが安心です。
申告の期限と提出先
- 申告期間:売却した年の翌年の2月16日~3月15日
- 納付期限:3月15日まで
- 提出先:不動産の所在地を管轄する税務署
郵送・窓口・e-Taxいずれの方法でも提出可能です。
期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため、早めの準備を心がけましょう。

税理士に依頼した方が良いケース
確定申告はご自身で行うこともできますが、次のようなケースでは税理士へ相談することをおすすめします。
- 取得費が不明で計算根拠を証明できない
- 共有名義・持分割合が複雑
- 相続税を支払っており、取得費加算を適用したい
- 特例や控除を漏れなく適用したい
税理士に依頼することで、誤った申告や余計な税負担を防げます。
特例・控除の活用
相続した空き家を売却する場合、条件を満たせば次のような控除や特例を利用できる可能性があります。
- 相続空き家3,000万円特別控除
- 取得費加算の特例
- 譲渡損失の損益通算・繰越控除

まとめ|相続不動産の確定申告は早めの準備が安心
相続した空き家や土地を売却した場合、利益が出れば確定申告が必要です。
書類の整理や計算が複雑になりがちなため、売却が決まった段階で早めに準備を始めましょう。
とくに、複数の相続不動産を売却する場合や、相続税を支払っている場合は、税理士に相談することで節税の機会を逃さず、申告ミスを防ぐことができます。


































