皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
当社が相続不動産を扱うなかで、とくにご相談が多いのが「共有名義の不動産」です。
テレビ番組でも、相続を重ねるうちに共有者が90人にも増え、もはや誰も手をつけられない“宙に浮いた不動産”として紹介されるケースがあるほどです。
そこで本日は、共有名義の不動産が抱える問題点と、円滑に売却や整理を進めるためのトラブル回避のポイントについて話してまいります。
目次
共有名義の不動産を相続したらどうなる?
親の代からすでに「共有名義」となっている土地や建物を相続した場合、単独名義の不動産と比べて相続手続きが複雑になります。
例えば、祖父母からの相続で父・叔父・叔母の3人が共有名義となっている土地を、さらに次の世代が相続すると、共有者の数は一気に増加し、売却や処分の合意を得るのが困難になります。
このような状態を放置すると、
- 相続人の所在が不明になる
- 管理や修繕の意思決定ができない
- 固定資産税の負担をめぐって不公平感が生じる
- 売却の際に全員の合意が得られない
といった問題が発生します。

共有名義の基本:持分割合と権利関係
共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有している状態です。それぞれの名義人が「持分割合」を持ち、法律上は平等な権利を有します。
例えば、父と叔母が2分の1ずつで土地を共有していた場合、
- 自分と弟が父の持分を相続すれば「4分の1の権利者」
- 叔母が亡くなってその子どもたちが相続すれば「さらに共有者が増える」
というように、世代が進むほど共有関係は複雑化します。

共有不動産をどうするか?3つの選択肢
① 共有のまま維持する
共有者全員の協力が得られる場合は、そのまま共有状態を維持することも可能です。
しかし、売却や大きな決定を行う際には全員の合意が必要となるため、意思がそろわないと手続きが進まないこともあります。
また、固定資産税の負担割合や、建物・土地の維持管理を誰が行うかといった問題で意見が分かれ、トラブルに発展するケースも少なくありません。
② 持分を売却する
共有者間で意見がまとまらない場合でも、自分の持分だけを売却することは法律上可能です。
ただし、買い手は限られ、売却価格が実勢価格より大きく下がるのが一般的です。
さらに、購入者が共有持分の買取業者であった場合、残りの共有者との間でトラブルに発展するリスクもあるため、慎重な判断が求められます。
③ 共有を解消して単独所有にする
もっともスムーズな方法は「共有状態の解消」です。
- 共有者の間で分筆(物理的分割)して単独所有にする
- 持分をお互いに売買・贈与して整理する
- 換価分割(売却して代金を分ける)を行う
といった方法があります。
共有者が多いほど合意形成に時間がかかるため、早めの対応が肝心です。

共有不動産の売却時に注意すべきポイント
共有名義の土地や建物を売却するには、共有者全員の合意と署名(または電子署名)が必要です。
紙で契約する場合は、各共有者の実印・印鑑証明書・本人確認書類が求められます。
1人でも反対すれば売却はできません。
とくに相続が重なって共有者が増えている場合や、相続人が県外に散らばっている場合には、権利関係の整理だけでも数カ月を要することがあります。
また、登記簿上の住所と実際の住所が異なる場合は、住所変更登記も必要です。
ただし、故人の場合は住所変更ができないため、登記簿上の住所と亡くなる直前の住所が同一人物であることを示す住民票の除票や戸籍の附票などの証明書類を添付する必要があります。
書類の不備や共有者間での意思確認の遅れは、売却全体の進行に大きく影響し、場合によってはせっかくの売却機会を逃してしまう恐れがあります。
そのため、不動産会社・司法書士・税理士が連携し、土地の場合は土地家屋調査士も加えて、専門家同士で一体的に進めることが望ましいです。
トラブル回避のための実践ポイント
- 共有者リストを整理する
誰がどの割合で持分を所有しているかを明確にし、連絡先を記録しておきましょう。 - 共有者間の意思確認を早めに行う
「今後の活用方針」「売却の希望」「固定資産税の負担割合」などを事前に話し合うことで、将来の対立を防げます。 - 相続登記を必ず済ませる
登記を放置すると、次の相続で相続人が増え、さらに権利関係が複雑になります。
令和6年4月からは相続登記の義務化により、申請を怠ると過料の対象になる場合があります。 - 専門家への相談を早めに
共有不動産の整理には、登記・税務・不動産取引のすべてが関係します。
複数の専門分野を横断的に扱える「相続不動産に強い専門家」への相談が安心です。

まとめ|共有名義は「早めの整理」がカギ
共有名義の不動産を相続したまま放置すると、世代を重ねるごとに共有者が増え、売却も処分もできない“身動きの取れない負動産”になってしまいます。
親の代から続く共有関係こそ、次の相続が起こる前に整理することを目指しましょう。
「何から始めればよいのかわからない」というときは、相続と不動産の両方に詳しい不動産会社へ相談し、現状を整理しながら今後の進め方を一緒に検討していきましょう。

































