皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
相続をきっかけに実家や田畑、山林などを引き継いだものの、「どこからどこまでがうちの土地なのか分からない」「境界杭が見当たらない」というご相談は、近年とても増えています。
そこで本日は、相続した土地の境界が曖昧なときに起こりやすいトラブルと、測量・筆界特定による解決の流れを解説します。
目次
よくあるケース①|「昔の口約束」が根拠になっている
相続相談の現場でよくあるのが、「昔、親世代が隣同士で決めた」というケースです。
ある方の例では、久しぶりに帰省して実家の土地を確認していたところ、お隣の高齢男性が声をかけてきました。
「あなたのお爺さんとここが境界だと口約束をしていたんだ。」
「あなたは生まれて間もない頃だったかな。」
当時は杭や明確な目印もなく、互いの話し合いで「この辺りが境だね」と決めていたそうです。
しかし、その祖父も隣人もすでに他界。
残された世代には正式な測量図も契約書もなく、どこまでが自分の土地なのか証明できない状況でした。
このような「口約束の境界」は、法的な効力が弱いため、売却時にトラブルの火種になります。

よくあるケース②|境界があいまいなまま売却を進めようとして止まる
「古家を解体して売りたい」「相続登記のついでに処分したい」というご相談でも、いざ不動産会社に査定を依頼すると、こう言われることがあります。
「境界がはっきりしない土地は、どうしても売却しづらいんです。」
「ちなみに、近隣の方との関係は良好ですか?」
実際、隣地との境界が未確定のままでは、買主側もリスクを負うため契約に進めないことが多いのです。
とくに再建築や分筆を伴う場合は、必ず境界確定測量が必要になります。
近年では、大手ハウスメーカーや建築会社の多くが、境界が確定していない土地での建築を原則として受け付けないのが一般的になっています。

放置すると起こる4つのリスク
- 売却・買取の話が止まる(境界未確定地は売買が難しい)
- 隣地とのトラブルが発生(越境・塀・樹木などで揉めやすい)
- 固定資産税や管理責任が不明確(越境部分の扱いが曖昧)
- 次の相続に持ち越すリスク(子や孫がさらに苦労する)
境界問題は、時間が経つほど証拠も関係者も失われ、解決が難しくなるのが現実です。
解決の第一歩は「現地確認」と「資料収集」
境界を確定するためには、まず次の3つを行います。
- 法務局で地積測量図・公図を取得
- 隣地の地番と所有者を確認(登記簿謄本)
- 現地で境界標(杭・ブロック・フェンス)を確認
これらを基に、土地家屋調査士に依頼して「境界確定測量」または「筆界特定制度」を進める流れになります。

測量と筆界特定の違い
| 項目 | 境界確定測量 | 筆界特定制度 |
|---|---|---|
| 主体 | 土地家屋調査士(依頼者) | 法務局(土地所有者の申請) |
| 手続き | 隣地所有者との立会い・同意が必要 | 行政的手続きで、法務局が筆界を判断 |
| 費用 | 面積・隣接地数により変動(約20万円~) | 申請手数料+調査費用(数万円〜) |
| メリット | 実務上の売却・登記に有効 | 紛争性が高い場合でも利用可能 |
| デメリット | 隣地が協力しないと進まない | 結果確定まで半年~1年かかる場合も |
隣地との関係を悪化させないために
「うちは代々の土地だから」「昔からここまで使ってる」といった主張は、どちらの側にもありがちです。
かし、感情的に話を進めてしまうと、隣地との関係がこじれる原因になりかねません。
そのため、第三者である専門家(土地家屋調査士・不動産業者)を介して進めるのが安心です。
当事者同士では言いづらい説明や法的根拠を、客観的に整理してもらえます。

まとめ|“あいまいなまま”の境が一番危険です
境界トラブルは、長年問題がなかった土地ほど見落とされやすいものです。
しかし、いざ相続や売却の段階で明るみに出ると、これまで問題視していなかった境界が原因で、「売れない」「登記が進まない」「隣と揉める」という三重苦に発展することもあります。
あのお隣の高齢男性の「あなたのお爺さんとここが境界だと口約束していたんだ」という言葉が象徴するように、“昔の約束”は記録に残らないリスクがあります。
相続した土地の境界が少しでも不明確だと感じたら、できるだけ早い段階で、測量や筆界特定の専門家である土地家屋調査士に相談しましょう。
早めの行動が、次の世代への負担を軽くする第一歩です。

































