皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
今、高知県では“静かに、しかし確実に” 負動産の大波 が押し寄せています。
現在でも約5.1万棟の「二次利用(売却・賃貸・活用の見込み)のない空き家」が存在しますが、今のペースで推移すると、2035~2040年頃には空き家は“7万棟規模”に達すると予測されています。
これは単なる空き家問題ではありません。
「土地そのものが価値を失う」深刻な時代へ突入しているということです。
そこで本日は、現場で寄せられるご相談や自治体の動きから、いま高知県で何が起きているのか、そしてこれから何が起きるのかについて話してまいります。
目次
空き家は減らず、むしろ“止まらず増え続ける”
高知県の空き家増加には明確な理由があります。
- 人口減少が全国でもトップクラス
- 若い世代の県外流出
- 一人暮らし高齢者の増加
- 相続しても住まない人が増えている
- 不動産需要の偏り(高知市・南国市中心部に集中、郡部は衰退)
つまり、県全体が“住む人そのものが減っていく構造”の中にあります。
そのため、空き家は今後も増え続けていきます。

最大の問題は“空き家”ではなく“土地需要の消滅”
空き家問題の本質は建物ではありません。
すでに 「土地が売れない」という状況が、高知県の多くの地域で始まっています。
とくに次のような地域では深刻です。
- 山間部・限界集落
- 道が狭く車が入らない地域
- 原野化した旧宅地
- 再建築不可や未接道地
- 公共交通が撤退した地域
- 災害リスクによる敬遠地域
これらは 建物を壊しても解決しません。

土地が“土地として成立しなくなる”未来
高知県の山間部では、インフラ維持が限界に近づいています。
- 道路や橋の維持が困難
- 上下水道の撤去・廃止
- バス路線の撤退
- 集落ごと無人化の進行
インフラが維持できなくなると、その土地はもはや不動産として成立しません。
いわば “自然に還っていく土地” が増えています。

相続放棄の増加で“清算不能負動産”が急増する
最近では、清算人を立てずに相続放棄だけを行うケースが激増しています。
すると、
- 名義は故人のまま残り
- 行政も処分できず
- 宙に浮いた状態が続き
- 雑草繁茂・倒壊・越境などの管理不全
という「清算不能負動産」が大量に生まれます。
この“宙に浮いた負動産”が年々増えていることこそ、高知県の不動産問題がさらに深刻化している最大の要因と言えます。

行政は戸籍をたどり、強制的に「納税義務者」を決める
固定資産税は“誰かが必ず払う”ことを前提に、行政が納税者を特定する仕組みになっています。
そのため、名義が古いままでも、登記が放置されていても、所有者がすでに亡くなっていても、行政は戸籍や住民情報をたどって、現在の関係者から「納税義務者」を探し出すことができます。
市町村には、固定資産税や家屋敷課税(市県民税)を課すために、戸籍・名寄帳・住基情報などから調査する権限があり、
- 相続登記がされていない
- 名義が故人のまま
- 所有関係が複雑
- 親族と疎遠
といった状況でも、行政は調査を進めていきます。
そして現場では、
- 疎遠な親族に突然、納税通知が届く
- 「名義は持っていないのに家屋敷課税(市県民税)が来た」というケース
- 土地の管理状況について行政から照会が届く
こうした事例が年々増えています。
固定資産税は、登記名義や実際の所有意思とは関係なく、“課税できる対象者”へ課すことができる税金であり、この追跡の仕組みは今後さらに強化される可能性があります。

国庫帰属制度でも救えない土地が多い
相続土地国庫帰属制度は「最後の出口」に見えますが、高知県の土地は不承認となるケースが極めて多いです。
- 管理負担の大きい山林(竹林)や、人口減少が進む市街地エリア
- 崩壊・災害リスクのある土地
- 境界が不明確で特定が難しい土地
これらは国が引き取りを避けるため、制度が使えない負動産が大量に残るのが現実です。

高知県はこれから“負動産の時代”へ
ここまでの現象は、すべてつながっています。
- 空き家が増える
- 土地需要が消える
- 更地でも売れない
- しかし負動産は残り続ける
- 国庫帰属でも救えない
つまり高知県は、負動産が積み上がり続ける構造の中にいる ということです。
そして空き家7万棟時代は、この流れが「さらに深刻化した姿」に他なりません。

まとめ|負動産整理業者が必要な時代へ
このまま空き家が7万棟規模に向かえば、高知県は“負動産先進県”として全国でも突出した深刻な課題を抱える地域になるでしょう。
今後、必要とされるのは
- 法的に安全な譲渡設計
- 相続放棄の使い方
- 国庫帰属の可否判断
- 境界不明土地の整理
- 共有名義の解消
- 解体と出口戦略を一体化した設計
- 田畑・山林・原野・未接道地の出口作り
遺品整理市場が急拡大した流れと同様に、今後は負動産整理の専門業者も一段と需要が高まると見込まれます。
その際は、全国展開の業者だけでなく、地元の地形・交通・地域事情(歴史)に精通し、地域と“顔の見える関係”で向き合う事業者が増えることが望ましい方向性です。


































