皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
山林を相続した、または相続を控えて情報を調べている中で、「この山林は保安林に指定されています」といった説明を受けたり、登記簿の地目に「保安林」と記載されているのを見て、戸惑う方は少なくありません。
山林と保安林は、見た目が似ていても法的な位置づけや扱いが大きく異なる土地です。
相続前後にこの違いを理解しておくことは、後の手続きや判断の前提として非常に重要です。
こので本日は、山林と保安林の違いについてを話してまいります。
目次
山林とは何か?
一般的に「山林」とは、樹木が生育している土地、または将来的に樹木の生育を目的とした土地を指します。
山林の特徴
- 登記簿上の地目が「山林」
- 私有地であるケースが多い
- 原則として、土地利用や管理は所有者の判断に委ねられる
つまり、山林は土地の「状態・地目」を示す言葉であり、特別な法的指定がなければ、一般の私有地として扱われます。
保安林とは何か?
一方で「保安林」は、森林法に基づき、国や都道府県が公益目的で指定した森林です。
保安林の目的
保安林は、次のような「公益的機能を守るため」に指定されます。
- 土砂災害の防止
- 水源の涵養
- 河川や海岸の保全
- 生活環境の保全
そのため、保安林は「森林としての役割を守ること」が最優先される土地です。

保安林の種類について
保安林は、森林法に基づき、守るべき目的ごとに種類が分かれています。
指定の理由によって、求められる役割や管理の考え方が異なります。
主な保安林の種類は、次のとおりです。
- 水源かん養保安林
雨水を蓄え、河川の流量を安定させるなど、水源を守ることを目的とした保安林です。 - 土砂流出防備保安林
土砂崩れや地すべりを防ぎ、下流域の安全を確保するために指定されます。 - 土砂崩壊防備保安林
急傾斜地などで、山腹の崩壊を防ぐ役割を担います。 - 防風保安林・防潮保安林
強風や高潮、飛砂などから、集落や農地を守る目的で指定されます。
これらの保安林は、いずれも公益的な機能を守るために指定されており、指定の種類によって、重視される役割が異なります。

山林と保安林の決定的な違い
① 法的な位置づけの違い
- 山林:土地の地目・状態を示す概念
- 保安林:森林法に基づく「法的指定」
保安林は「山林の一種」ですが、すべての山林が保安林というわけではありません。
② 利用・行為に対する制限の有無
- 山林:原則として制限は少ない
- 保安林:伐採・造成・土地形質変更などに厳しい制限がある
保安林では、
- 立木の伐採
- 土地の掘削・盛土
- 工作物の設置
などについて、事前の「許可や届出」が必要になります。
③ 指定・解除の仕組み
- 山林:特別な指定は不要
- 保安林:行政が公益目的で指定
保安林は、所有者の意思とは関係なく指定されることがあり、また、簡単に解除できるものではありません。
④ 登記との関係
- 地目は「山林」のままでも
- 保安林指定が別途かかっているケースがあります
そのため、登記簿だけを見て「普通の山林だと思っていたら、実は保安林だった」ということも珍しくありません。

山林と保安林の税制上の違い
山林と保安林では、税制上の扱いに違いがあります。
- 固定資産税
山林は原則として固定資産税の課税対象となります。
一方、保安林は公益性が考慮され、指定内容や自治体の判断によって、非課税または軽減措置が取られる場合があります。
- 相続税評価
相続税の評価では、山林は立地や利用状況に応じて評価されます。
保安林は利用に制限があることから、一般の山林に比べて評価額が低く算定される傾向があります。
このように、同じ「山林」であっても、保安林かどうかによって税制上の扱いが異なります。
相続前後に確認しておきたいポイント
山林を相続する前後では、次の点を確認しておくことが重要です。
- 保安林に指定されているかどうか
- どの種類の保安林か(水源か、土砂防止か等)
- 管轄する行政機関(県・森林管理署など)
これらは、森林簿や行政の公開資料、自治体窓口で確認できます。
高知県森づくり推進課
https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/huzoku/

まとめ|山林と保安林は「同じではない」
最後に、違いを整理します。
- 山林は「土地の状態・地目」
- 保安林は「公益目的の法的指定」
- 保安林は、利用や管理に一定の制限がある
- 見た目では区別できず、書類確認が重要
保安林であっても、山林と同様に所有権の移転は可能ですが、一定の制限があるため、通常の山林に比べて手続きが複雑になる場合があります。
相続前後の段階でこの違いを正しく理解しておくことで、「知らなかった」「後になって制限を知った」といった行き違いを防ぎ、状況に応じた判断がしやすくなります。
































