皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい不動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
不動産の整理や相続の場面で、次のような話を聞くことがあります。
「昔、隣の方と話し合って境界を決めました」
「境界標も動かしていませんし、特に問題はないと思います」
こうした、土地家屋調査士を介さず、隣地所有者同士で行われた境界の取り決めは、果たして法的に有効なのでしょうか。
そこで本日は、法律論だけでなく、不動産整理の現場で実際に起きている事例を踏まえて話してまいります。
目次
境界確定には「2つの境界」がある
まず前提として、土地の境界には性質の異なる2つの考え方があります。

- 筆界(ひっかい)
登記制度上、公的に定められている境界 - 所有権界
当事者間で「ここまでが自分の土地」と合意している境界
隣地所有者同士で取り決められるのは、原則として「所有権界」です。
登記上の境界である筆界を変更・確定する権限は、当事者だけにはありません。
当事者同士の境界合意は有効なのか
民事上は「有効」と評価される
隣地所有者同士が合意し、
- 境界の位置を明確にし
- 双方が署名・押印した書面を残している
場合、その合意は「私法上の契約(和解・確認契約)」として成立します。
つまり、
- 当事者間では
- 境界について争わないという意味で
一定の法的効力はあります。

ただし「効力の及ぶ範囲」には限界がある
重要なのは、どこまで効力が及ぶのかという点です。
第三者には原則として及ばない
当事者間で有効な合意であっても、
- 土地を取得した次の所有者
- 相続人
- 抵当権者
- 行政(登記所)
を当然に拘束するものではありません。
不動産整理の場面では、「当事者が変わった瞬間に前提が崩れる」ことが少なくありません。
登記・公的資料との関係


土地家屋調査士を介さない境界合意は、次の点で公的資料には反映されません。
- 地積測量図
- 登記所備付地図
- 境界標の正式な設置記録
そのため、法務局の視点では「境界が確定していない土地」 と同じ扱いになることがあります。
不動産整理の現場で起きやすい問題
実務の中でよく見られるのは、次のようなケースです。
売却や処分の段階で止まる
- 買主や金融機関から測量を求められる
- 過去の合意書があっても評価されない
相続人同士で認識がずれる
- 被相続人は合意していたが、相続人は知らない
- 相続人が「そんな話は聞いていない」と再協議になる
境界だと思っていた線が、正式な境界ではなかった
- 合意していた境界が、登記上の筆界と異なっていた
- 修正が必要になり、結果的に時間と費用が増える
これらは、合意そのものが無効だったから起きる問題ではありません。
合意がどの範囲で、どの場面まで使えるものなのかが正しく理解されていなかったために生じています。
「意味がない合意」ではないが「万能でもない」
整理すると、次のように考えるのが現実的です。
- 当事者同士の境界合意
→ その時点・その関係性では意味がある - 不動産を将来にわたって整理・処分する資料
→ それだけでは足りないことが多い
境界合意は、「これで永久に決まり」というものではありません。
その時点で話を整理した、ひとつの区切りに過ぎないものです。
まとめ|判断を誤らないために

土地家屋調査士を介さない境界確定について、要点をまとめます。
- 当事者間では法的に一定の効力がある
- 第三者や登記には原則として影響しない
- 不動産整理・相続・売却の場面では不足が生じやすい
- 問題は「有効か無効か」ではなく「何に使えるか」
境界をどう扱うべきかは、その土地を「今後どうするか」によって判断が変わります。
境界がどのような性質のものかを正しく理解することが、不動産トラブルを防ぐための第一歩といえます。

































