皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい不動産を専門に扱う、株式会社福島屋代表の上田です。
相続した不動産を売却したいと思ったとき、最初に直面するのが「相続登記が済んでいない場合どうするのか?」という問題です。
そこで本日は、相続登記未了の不動産売買におけるリスクや、一般的な手付解除の仕組み、さらに実際に「手付金の倍返し」に発展したケースを交えて話してまいります。
目次
相続登記をしていない不動産は原則「売れない」
不動産の売却には、登記簿上の所有者が誰なのかを明確にすることが不可欠です。
相続登記をしていない状態では登記簿の名義は被相続人(亡くなった方)のままであり、売買契約を締結しても法的には成立しません。
したがって、まずは相続人全員で遺産分割協議を行い、相続登記を完了させることが大前提です。

相続登記前に手付金を受け取るリスク
それでも、「買主の条件が魅力的なうちに、気が変わらないうちに契約を進めたい」と考える相続人もいます。
しかし、相続登記を済ませないまま手付金を受け取ることには大きなリスクがあります。
- 契約自体が無効になる可能性
- 相続人間で紛争が起こる可能性
- 買主から損害賠償や違約金を請求されるリスク
とくに問題なのは、「売主側から契約を解除せざるを得なくなった場合」、手付金の倍返しという重い義務が発生することです。
実際にあった「手付金の倍返しに発展した例」
あるケースでは、父の名義になっていた土地を、次女が「相続人全員が口頭で賛成してくれた」と考え、チャンスを逃すまいと遺産分割協議を正式にまとめないまま、相続登記をせずに買主と売買契約をしました。
はじめは相続人全員が売却に同意していて、契約のときに買主から手付金100万円を受け取り、引き渡しの日までに相続登記を終える予定でした。
ところが、引き渡しに向けて相続登記の手続きを進めようとした矢先、三男が「やっぱりその土地は売りたくない」と反対してきました。
遺産分割協議が再びまとまらなくなり、相続登記もできなくなってしまいました。
その結果、契約を履行できない次女側が契約を解除することになり、受け取った200万円の倍額である400万円を買主に返還する事態に発展しました。
このように、「相続登記は後回しでも大丈夫だろう」といった安易な判断が、思わぬ大きな経済的負担につながることもあります。

一般的な「手付金」と「手付解除」について
不動産売買における手付金は、多くの場合「解約手付」として扱われます。
これは次のルールに基づきます。
- 買主が解除する場合 → 手付金を放棄することで契約解除可能
- 売主が解除する場合 → 手付金の倍額を返還して契約解除可能
この仕組みは「有効な契約」が成立している場合にのみ機能します。
相続登記が未了で契約が不成立となれば、そもそも法的にトラブル回避の制度が働かない場合もあります。
相続登記をしないまま進めたい場合の工夫
どうしても買主と早めに話を進めたい場合は、次のような工夫があります。
- 相続人全員の署名捺印入りで「売買予約契約」を結ぶ
- 契約書に「相続登記が完了した場合に効力を生じる」といった停止条件を明記する
こうした対応によって、相続登記を行わずに手続きを進めた際に生じ得るトラブルのリスクを抑えることができます。

まとめ|まず相続登記を済ませることが絶対条件
- 相続登記をしていない不動産は原則として売買できない。
- 手付金を受け取ると、契約無効・相続人間の紛争・損害賠償リスクに直結する。
- 売主都合の解除は「手付金の倍返し」に発展し、深刻な経済的損失を招くこともある。
- 安全に売却するためには、まず相続登記を済ませることが絶対条件。
「他の相続人もきっと同意してくれるだろう」という思い込みで動くのではなく、不動産会社に相談しながら相続登記を済ませてから売却に臨むことを強くおすすめします。

































