皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
「遺言書さえあれば、相続の話し合いは不要になるのでは?」
こうした疑問を持たれる方は多いです。
確かに、遺言書には相続人の意思を明確にし、相続トラブルを防ぐ効果があります。
しかし、遺言書があっても遺産分割協議が必要になるケースや、遺言の内容だけでは相続手続きが完了しない場合も少なくありません。
そこで本日は、遺言書と遺産分割協議の関係を整理し、実務でよくある注意点(銀行預金の引き出しや不動産登記など)について話してまります。
目次
遺言書がある場合の基本ルール
- 原則として、遺言書は遺産分割協議より優先されます。
- 遺言に従って相続手続きを行えば、原則的には協議を行う必要はありません。
例えば、「自宅は長男に相続させる」「預金は長女に全額相続させる」といった明確な記載がある場合、その内容に基づいて手続きが進められます。

遺言書があっても協議が必要になるケース
① 遺言に記載のない財産がある場合
遺言書にすべての財産が書かれているとは限りません。
例:不動産は書かれていたが、定期預金や株式の記載が漏れているケース。
この場合、記載のない財産については相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
② 遺留分侵害がある場合
法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められています。
もし遺言で一部の相続人に全財産を相続させると書かれていたとしても、他の相続人から「遺留分侵害額請求」があれば調整が必要になり、協議や交渉が避けられません。
③ 相続人全員で遺言内容を変更したい場合
法律上、相続人全員が同意すれば、遺言書の内容と異なる分割も可能です。
例えば「父の遺言で長男に自宅を相続させる」とあっても、相続人全員が話し合い「自宅は売却して代金を分けたい」と同意すれば、それに従った分割ができます。

実務で注意が必要な手続き例
銀行預金の引き出し
- 遺言書に「○○銀行の預金は長女に相続させる」と明記されている場合、銀行に遺言書と必要書類を提出すれば単独で引き出し可能です。
- ただし、自筆証書遺言の場合は「家庭裁判所での検認手続き」が必要になるため、手続きに数週間かかることもあります。
ポイント:遺言書に記載がない預金については、相続人全員の同意(遺産分割協議書)が必要です。
不動産の名義変更
- 遺言で「自宅は妻に相続させる」と記載されていれば、妻はその遺言をもとに法務局で登記申請が可能です。
- しかし、遺言書に不動産の具体的な所在や内容の記載が不足しており、どの不動産を指しているのか特定できない場合には、やはり相続人全員の同意(遺産分割協議書)が必要です。
株式・投資信託などの金融資産
証券会社は遺言書の内容に基づいて手続きを進めますが、金融機関ごとに必要書類や手続きの厳格さが異なるため、所要時間にも差が生じる点には注意が必要です。

まとめ|遺言書があれば相続人同士の話し合いは不要
- 遺言書があれば原則、遺産分割協議は不要。
- ただし 記載漏れ・遺留分侵害・全員同意での変更 など、協議が必要になる場面は多い。
- 実務では「銀行預金の引き出し」「不動産の登記」など手続きごとに必要書類が異なり、遺言があっても協議が求められる場合がある。

































