地方の老朽マンションが「負動産化」する理由|修繕費・管理費滞納・相続リスクを解説

地方の老朽マンションが「負動産化」する理由|修繕費・管理費滞納・相続リスクを徹底解説

皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい不動産を専門に扱う、株式会社福島屋代表の上田です。

地方では今、築50年以上の分譲マンションが急速に増えています。

「老朽化」「管理組合の高齢化」「修繕費の不足」「相続後の放置」など、様々な問題が複雑に絡み合い、資産どころか負担となる“負動産”へと変わりつつあります。

そこで本日は、地方マンションがなぜ負動産化してしまうのか、その背景・リスク・そして取るべき対策について話してまいります。

築古マンションの急増と「高齢化問題」

日本全国で築50年以上のマンションは増加の一途をたどっています。

とくに地方都市では、バブル期に建設された中小規模の分譲マンションが多く、入居者も同時に高齢化しています。

  • 管理組合の理事が高齢で運営が回らない
  • 総会の開催や意思決定が難しい
  • 高額な修繕費用の負担に対して、住民間で意見がまとまらない

こうした深刻な問題が建物の老朽化と住民の高齢化とともに同時に進む状況です。

地方の老朽マンションが「負動産化」する理由|修繕費・管理費滞納・相続リスクを徹底解説

修繕積立金の不足と管理費滞納

地方マンションでは、販売当初の分譲価格を抑えるために修繕積立金が低く設定されているケースが多く見られます。

結果として、築50年を過ぎても、共有設備の故障など緊急時に備えた修繕資金が十分に確保できていません。

さらに、以下のような構造的問題もあります。

  • 高齢の方が年金暮らしで、支払いたくても支払えない状況が増えている
  • 滞納者が亡くなっても相続人と連絡が取れない
  • 所有者が亡くなり、遠方に住む相続人が支払いに対応しない

こうして修繕費や管理費が不足し、残された住民の負担がさらに重くなるという負のスパイラルに陥ります。

やがてエレベーターが使えなくなったり、消防設備の更新ができなかったり、外壁タイルの落下など建物が危険な状態に陥り、「管理不全マンション」として自治体が介入するケースも増えています。

買い手のつかない売れない不動産

売りたくても買い手がつかない「資産価値ゼロ」問題

老朽化が進んだマンションは、たとえ都市部であっても売却が難しくなります。

とくに地方では需要そのものが低下しており、以下のような状況が珍しくありません。

  • 駐車場が狭く、または設けられておらず、車社会に合わない
  • 修繕積立金の滞納が多く、管理状態が悪い
  • より利便性の高いエリアに新しいマンションが次々と建てられている
  • 周辺の中古マンション相場より極端に安いのに買い手ゼロ

つまり「不動産=資産」という常識が通じず、「売れない不動産=負動産」として所有者を苦しめることになります。

老朽マンション負動産

相続による放置と「負動産の連鎖」

親が所有していた地方マンションを相続したものの、遠方に住む子ども世代は「住まない・貸せない・売れない」の三重苦に陥ります。

結果、次のような問題が起きます。

  • 相続登記をせずに放置(※2024年からは義務化)
  • 管理費や修繕積立金、固定資産税は相続人に自動的に請求
  • 連絡の取れない相続人が増え、結果的に真面目に対応する人ほど負担を強いられる

こうして、一度放置されると手が付けられない構造的負債となってしまいます。

老朽マンション管理費・修繕積立金滞納問題

裁判をしても「回収不能」という現実

管理組合が滞納者に対して法的措置を検討することもありますが、実際には勝訴しても支払われないケースがほとんどです。

  • 滞納者が無職・高齢・生活保護受給中
  • 差し押さえる資産がない

その結果、弁護士費用や訴訟費用の方が高額になります。

そのため、管理組合も訴訟に踏み切るだけの体力がなく、費用倒れを懸念して行動できず、結果として滞納問題が放置されたまま進展しない状況が続いています。

地方の老朽マンションが「負動産化」する理由|修繕費・管理費滞納・相続リスクを徹底解説

建て替えや解体が“非現実的”な理由

「老朽化したなら建て替えればいい」という意見もありますが、現実には以下の壁が立ちはだかります。

  • 所有者(区分所有者)全員の 5分の4以上の同意 が必要(合意形成が極めて困難)※2025年10月時点
  • 解体費用・建設費が高騰している
  • 土地の評価額より解体費の方が高い可能性も

このため、多くの管理組合が建て替えを断念し、「修繕もできない」「解体もできない」という宙ぶらりん状態に陥ります。

行政が注目する「マンションの負動産化」問題

2023年のマンション管理適正化法改正では、老朽マンションの実態を把握するため、自治体による「管理計画認定制度」が導入されました。

しかし、制度が整っても資金と人材が足りない地方では、実効性のある再生策に結びついていないのが現状です。

国土交通省の調査では、今後10年で築50年以上となるマンションが急増し、地方では約3割が修繕積立金不足に陥ると見られています。

今後、管理不全マンションの増加が社会問題化する恐れがあります。

国交省老朽マンション問題

相続人ができる3つの現実的対策

老朽マンションの負動産化を防ぐには、「早めの判断」と「専門家の関与」が不可欠です。

① 売却・譲渡を早めに検討

  • 状況が悪化する前に、不動産業者や買取会社に相談
  • 安くても、将来を見据えて早めの損切りを

② 管理組合の財務状況をしっかり確認する

  • 滞納率・積立金残高・長期修繕計画を定期的に確認
  • 今後見込まれる管理費の値上げや修繕工事の負担金を予測

③ 相続対策を事前に準備

  • 早めに権利関係を整理
  • 相続人間で「負担金・処分方針」を共有しておく
  • 場合によっては、相続放棄を検討することも選択肢の一つ
老朽マンション出口戦略

まとめ|相続してからでは手遅れになる前に

地方の老朽マンションは、時間が経つほど「売れない・直せない・解体できない」物件へと変化します。

相続してから動くのではなく、今のうちに出口を設計することが何より重要です。

  • 修繕積立金や滞納状況を把握する
  • 早めに不動産・法律の専門家に相談する
  • 現実的な“損切り”を視野に入れる

ABOUT US
上田 司代表取締役/宅地建物取引士
相続した負動産で苦労した自身の経験を原点に、同じような悩みを抱える方の支えになりたいとの思いから、負動産専門のサポート事業を開始。相続不動産を中心に、各分野の専門家と連携し、売れない家や土地の再生・譲渡・国庫帰属など多角的な解決策を提案。高知県の空き家・遊休地問題の解決を使命とし、地域の実情に即した情報を発信しています。