皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
「認知症で施設に入っている親の家を売りたい」
「名義変更も相続放棄もできずに困っている」
こうした相談が近年、高知県内でも確実に増えています。
一度認知症を発症すると、法律上「判断能力が不十分」とみなされ、本人名義の不動産を売却・処分・名義変更することが原則としてできなくなります。
これは、本人の権利を守るための制度である一方で、家族にとっては資金面・精神面の双方で大きな負担となる現実もあります。
そこで本日は、認知症と不動産の関係、そしてそこに潜む課題について話してまいります。
目次
成年後見制度という選択肢と、その限界
専門家に依頼して「成年後見制度」を利用するという方法もあります。
しかし、負動産の処分や相続放棄を目的とする場合、費用対効果が見合わないのが実情です。
例えば、家庭裁判所への申立てを司法書士に依頼した場合、申立手数料や書類作成費用で10万〜20万円程度かかります(原則として申立人本人の負担)。
さらに、後見人が選任されると、専門家への報酬として月2万〜6万円程度が本人の財産から継続的に支払われます。
不動産が売却できれば契約を終了させることも可能ですが、必ずしもすぐに買い手が見つかるとは限りません。
そのため、成年後見制度は一定の資産価値がある不動産には有効でも、負動産の整理手段としては現実的とはいえません。

認知症の相続人がいる場合の相続登記
近年義務化された「相続登記」においても、認知症の相続人がいる場合には注意が必要です。
本人が判断能力を失っていると、遺産分割協議に参加できないため、通常の手続きでは登記を進めることができません。
この場合の選択肢は大きく2つです。
- 成年後見人を選任し、その後見人が代理で遺産分割協議に参加する方法
- 遺産分割協議を行わず、法定相続分どおりに登記する方法
しかし後者の場合、共有名義の不動産が増えるだけで、結局は将来の管理・処分が難しくなる“負動産”を生む結果となることも多いのが現状です。
このように、認知症の相続人がいるだけで、手続きが止まり、土地が「動かない資産」になってしまうのです。

長期化する認知症と、家族の経済的負担
今の医学では、一度認知症になると元の健康な状態に戻ることは極めて難しく、10年以上にわたって認知症のまま生活するケースも珍しくありません。
その間、施設費に入居した場合、生活費は月10〜20万円程度が必要になることもあり、年金や預貯金だけで足りない場合、子や親族が負担するしかないという現実があります。
それでも、親名義の家は売ることも貸すこともできず、固定資産税や維持費、管理の手間だけが毎年積み重なっていく、これがまさに「認知症不動産」の典型的な姿です。

空き家を増やす“時代錯誤な”制度の壁
私は現場で多くの案件を見てきて、こう感じています。
いまの法律は、長寿社会・空き家社会に適していない。
認知症を理由にすべての財産行為を止めてしまうのではなく、
- 介護や施設費の捻出を目的とする場合
- 法定相続人全員の合意が整っている場合
認知症の進行度にもよりますが、一定の条件を満たす場合には、売却や処分といった手続きを柔軟に認める仕組みがあってもよいのではないでしょうか。
現行の制度を続けていては、空き家が増えるだけでなく、親族の経済的・精神的負担を一層深刻化させる要因にもなります。

高知県で増える“認知症×相続”の相談傾向
福島屋へのご相談の中でも、「高齢の親に負動産の相続が回ってきており、この先が不安だ」というお子さん世代からの声が多く寄せられています。
とくに多いのは次のようなケースです。
- 親が高齢で、子どもが相続後の負担を懸念している
- 子は「このままだと負動産になる」と危惧しているが、親は現実感がない
- 叔父や叔母など相続人が多く話がまとまらないが、できれば自分の親にはその不動産を相続してほしくない
こうした、高齢者が相続人となる“認知症リスクを抱えた負動産”は、早めに家族で話し合わなければ、手遅れになりやすいタイプの不動産です。
高知県の現実|死亡者数と不動産相続の増加
高知県では、年間1万人以上が亡くなり、その多くが土地や家屋、山林、農地を所有しています。
地方では一人が複数の不動産を持つことも多く、相続件数=遊休地・空き家の増加につながっています。
相続人の多くが高齢である場合、話し合いが一層進みにくくなり、その結果、相続不動産が放置されて負動産化してしまう事例が増えています。

まとめ|成年後見制度に頼らない、不動産凍結を防ぐための早期対応
認知症は誰にでも起こり得ます。
そして、認知症をきっかけに「家が売れない」「処分できない」「相続放棄もできない」といった状況に陥ることは、もはや特別なことではありません。
今こそ、「本人の保護」と「家族の生活を守る」バランスを取り戻す制度設計が求められています。
成年後見制度だけでは救えない現実を見据え、柔軟な仕組みと社会的理解が必要です。
また、同じような悩みを抱えている方には、できるだけ早い段階で相続不動産の専門家へ相談されることを強くおすすめします。




























