皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
不動産の売買では、本来「境界を明示すること」が原則です。
しかし、現実にはすべての土地で境界が確定しているわけではありません。
とくに相続で受け継いだ田舎の土地や、低価格の空き家などでは、測量費用が売買代金を上回るケースも珍しくありません。
そこで本日は、「境界非明示」で進める不動産取引の実態と、注意すべきポイントについて話してまいります。
目次
境界明示は原則必要
土地取引における「境界明示義務」とは
不動産を売買する際、売主には境界を明らかにする義務(境界明示義務)があります。
これは、買主が安心して土地を利用できるようにするためで、宅地建物取引業法上も重要事項として説明が求められています。
境界明示とは、単に「ここが境界線です」と口頭で伝えるだけではなく、
- 隣地所有者の立会い
- 境界標の設置
- 測量図や確定図の作成
など、法的・物理的に境界を確定させる手続きを指します。

それでも「境界非明示」で取引するケースもある
双方が合意すれば、境界非明示でも取引は可能
ただし、売主・買主双方の合意があれば、「境界非明示」で売買契約を締結することも可能です。
これは法律で禁じられているわけではなく、実務上も多くの取引で行われています。
この場合、契約書には
「本物件の境界については明示しないものとし、売主は境界に関する責任を負わない」
といった特約(境界非明示特約)が記載されます。
なぜ非明示で進めるのか ― 背景にある“費用負担”の問題
特に地方や低価格の不動産では、境界確定にかかる費用が売買価格を超えることが少なくありません。
例えば、
売買価格50万円の築古空き家でも、隣接地が5筆以上あり、確定測量を行うと費用が50万円前後になる
といったケースがあります。
境界確定は、専門の土地家屋調査士が行う測量業務であり、隣地所有者の立会いや書類作成、境界標の設置などに多くの手間と費用がかかります。
そのため、費用対効果を考え、あえて「非明示」で合意することもあるのです。

境界非明示取引のメリットとリスク
メリット:早期売却・費用削減が可能
- 測量費用をかけずに早く売却できる
- 売主側の負担が減る
- 相続放棄前や処分優先のケースで柔軟に対応できる
低価格・築古・遠方の物件など、処分を優先したい不動産には現実的な選択肢となります。
リスク:将来の境界トラブルを引き継ぐ可能性
一方で、買主側から見ると、
- 隣地との越境が発覚するリスク
- 将来、再建築や売却時に境界確定が必要になる可能性
- 境界に関する紛争時、売主に責任を問えない(特約免責)
といったリスクも存在します。
そのため、契約書・重要事項説明書での明示と理解の共有が極めて重要です。

どんな場合に「境界非明示」が選ばれるのか
| 状況 | 非明示が選ばれる主な理由 |
|---|---|
| 相続した古い土地・建物 | 測量図がなく、費用をかけたくない |
| 売買価格が低額(50〜100万円前後) | 測量費が割高で採算が合わない |
| 隣地所有者が不明・立会い困難 | 境界確定が実質不可能。筆界特定制度の利用はさらに負担増し |
| 処分を急ぐケース | 相続放棄を検討している |
| 再建築不可・山林・原野 | 境界の実用性が低い |

まとめ|境界非明示は状況に応じた“現実的な判断”のひとつ
不動産の売買では、原則として境界を明示することが望ましいです。
しかし、相続や低価格物件などでは、費用負担のバランスを考え、非明示で合意することも実務上はあります。
重要なのは、
- 売主と買主が十分に内容を理解し、書面で明示しておくこと
- 契約後に「知らなかった」とならないよう、専門家が間に入ること
境界確定を行わなくても、取引自体は可能です。
物件の状況に合わせて、境界を確定するか非明示で進めるかを丁寧に選ぶことが、相続不動産の整理を進める近道です。

































