皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
相続した不動産の中に山林が紛れていたことで対応に行き詰まる方が、高知県ではここ数年で急増しています。
地積測量が完了しておらず場所の特定すらできないうえ、役所や法務局に確認しても位置が確定できないケースが非常に多く見られます。
その結果、「手放したくても処分できないまま、ただ所有し続けるしかない」という深刻な状況に追い込まれてしまう例も少なくありません。
そこで本日は、高知県で山林相続の相談が増え続けている理由と、実際に解決へ進めるためのポイントについて話してまいります。
目次
なぜ山林相続で困る人が増えているのか
山林相続の問題は、単に「山を持っている」だけでは終わりません。背景には、長期的な時代変化が関係しています。
昭和初期の林業ブーム
約80年前、ヒノキやスギを植林すれば、伐採して売るだけで「家が一軒建つ」と言われた時代がありました。
山道がなく車で運べない状況でも材木を担ぎ下ろしながら、「将来の資産になる」という期待のもと植林が進められていた歴史が、現在の山林相続問題の一因となっています。
その後、管理されないまま放置された山が急増
しかし、外材の普及・木材価格の低迷・伐採コストの高騰によって、山を所有しても利益が出ない状況になり、多くの山林が採算の取れない資産となってしまいました。
その結果、間伐や手入れが一度も行われないまま放置されている山林が、高知県内には数多く残されています。

山林は誰から、どうやって入手されたのか?
相続相談の際によく出てくる疑問がこちらです。
- 山林はいつ誰が取得したのか
- 名義が変わった履歴がわからない
- そもそもなぜ所有しているのか分からない
実際、山林の入手経路には次のケースが目立ちます。
- 祖父母世代が農山村政策で取得していた
- 戦後の制度改革で払い下げを受けた
- 村の共有地を分筆して所有した
そもそもなぜ所有しているのか分からないまま代々受け継がれ、現在に至っている山林が非常に多いのです。

高知県は「個人所有の山」が圧倒的に多い
高知県は森の県ですが、その内訳には特徴があります。
| 区分 | 面積 | 割合 |
|---|---|---|
| 森林総面積 | 約 593,852 ha | ー |
| 民有林 | 約 467,845 ha | 約79% |
| 国有林 | 約 126,007 ha | 約21% |
つまり、山の約8割は県内外の個人が所有しているということです。
境界の確認・管理・処分・相続のすべてを個人が抱え込む構造になっているため、負担が表面化しやすいのが現状です。
「山の場所が分からない」問題は珍しくありません
次のような相談は非常に多く寄せられます。
- 現地を見たことがない
- 公図を見ても土地勘がなく、どこにある土地なのか特定できない
- 亡くなった祖父や父親の口頭説明しか手がかりがない
実際、山林の場所・境界の特定は、個人が行うにはほぼ不可能です。
測量費が数百万円規模になる場合もあるため、個人では動きようがなく、結局は地籍調査が行われるのを待つしかないという状況に陥りがちです。
山林は売れるのか?
山林の売却を検討する方は多いものの、実際に売れる山はごく一部に限られます。
主に次の条件が揃っている必要があります。
- 木材価値が高いこと(手入れが行き届いた高品質なスギ・ヒノキ等である)
- 搬出路(作業道)がある
- 境界が明確でトラブルの可能性がない
この3つが揃わない場合、実質的には売却が難しく、相続 → 放置 → 次世代に負担が引き継がれるという悪循環に陥りやすくなります。

山林相続で失敗しないために最も重要なこと
山林相続で最も大切なのは、相続が始まる前の段階で、管理状況や位置などの情報をしっかり整理しておくことです。
次のような情報が分かるだけでも状況は大きく前に進みます。
- 地積測量が完了しているかどうか
- 測量の成果が残っていない場合は、位置を特定できる資料が揃っているかどうか
- 間伐等の管理状況
まずは「現状を整理すること」から始めるのが最も安全で確実な一歩です。
そのうえで、状況に応じて 売却・無償譲渡・国庫帰属・相続放棄などの選択肢を検討していきます。

まとめ|次の世代での相続放棄という選択肢も視野に
手入れがされておらず資産価値が低い山林の場合、固定資産税が課税されていないケースがほとんどです。
位置が分からない山林については、無理に動こうとせず、地積測量が実施されるのを気長に待つという選択も現実的な対応となります。
そして、すでに相続してしまっている場合でも、次の世代での相続放棄という選択肢を残すことは可能です。
「子どもや孫の世代に負担を引き継がないように準備しておく」ことも、立派な資産整理の一つです。
山林は、相続負動産の中でも最も厄介といわれる不動産の一つです。
売却が難しいだけでなく、国庫帰属制度においても審査が最も厳しい分野で、認可までのハードルが非常に高いのが実情です。
結論、相続した山林は急いで結論を出す必要はありません。
焦らず現状整理から始め、負担を将来につくらない選択肢を見つけていきましょう。

































