皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
近年、借地に関する相談の中で、「借地権者が亡くなり、相続人の行方が分からない」「生涯独身で、築古の空き家だけが借地上に残されている」といったケースが急増しています。
地主側・相続人側のどちらにとっても、どうすることもできない“詰んだ状態”に陥りやすいのが、相続が絡む借地権トラブルの特徴です。
そこで本日は、
- なぜ最近この問題が増えているのか
- 何が問題で、どこが危険なのか
- 現実的にどう「整理」していくのか
について、実務目線で話してまります。
目次
なぜ「相続人不明の借地権トラブル」が増えているのか
背景には、次のような社会的変化があります。
- 借地契約が数十年前のまま更新されていない
- そもそも借地契約書自体が残っていない
- 借地権者が高齢化し、相続対策をしないまま死亡
- 生涯独身・子どもなし世帯の増加
- 空き家の長期放置による管理放棄
特に高知県では、「誰が借地権を引き継いだのか分からない」「そもそも相続人がいるのかも不明」という状況が、珍しくなくなっています。

相続人が不明だと、なぜ何もできなくなるのか
借地上にある建物は、原則として借地権者の財産です。
そのため、
- 地主が勝手に解体できない
- 第三者に譲渡することもできない
- 倒壊の危険があっても、簡単に手出しできない
という、非常に歯がゆい状況に陥ります。
「自分の土地なのに手を出せない」
「使われていない空き家なのに、触れない」
「誰のものか分からないのに、責任だけが不安」
この宙ぶらりん状態こそが、借地権トラブルの本質です。

築古空き家を放置すると起きやすいリスク
相続人が不明だからといって、何もしないまま放置すると、次のような問題が現実的に起こり得ます。
- 老朽化による倒壊・屋根や外壁の落下
- 台風・地震時の近隣被害
- 景観悪化による近隣トラブル
- 行政からの指導や指摘
そして多くの方が不安に思うのが、
「事故が起きたら、地主の責任になるのでは?」
という点です。
ケースごとの判断が必要ですが、“放置していたこと自体”が問題視される可能性は否定できません。

よくある誤解|「誰もいないなら、そのうち消える?」
この相談でよく聞くのが、
- 相続人がいなければ、そのうち借地権は消えるのでは?
- 時間が経てば自然に整理されるのでは?
という考えです。
しかし実際には、「相続人が分からない=借地権が消滅する」というわけではありません。
法律上は、
- 相続人の探索
- 相続財産管理人の選任
- 手続きを経た整理
といった、段階的で時間のかかるプロセスが必要になります。
借地権トラブルは、まずは状況整理が必要
このような借地権トラブルでは、いきなり「処分」を考えても、ほぼ前に進みません。
まず必要なのは、
- 権利関係の整理
- 今後も放置してよいのかの判断
- 動くべきリスクと、動かないリスクの比較
つまり、出口を急がず“状況整理”をすることです。

現実的な整理の方向性はケースごとに異なる
相続人不明の借地権トラブルに、万能な正解はありません。
- 相続人が後から判明するケース
- 実質的に誰も引き継がないケース
- 建物の危険度が高いケース
- 近隣との関係性が影響するケース
それぞれで、取るべき選択肢は変わります。
重要なのは、「何もできない」と思い込まないことと、「間違った行動をしないこと」です。
実務上まず行われるのは「相続人の探索」
借地権者が亡くなり、相続人が分からない場合でも、直ちに「何もできない」というわけではありません。
実務上はまず、弁護士や司法書士といった専門家が関与し、戸籍謄本等をたどって相続人の有無を確認する作業が行われます。
また、借地関係の当事者である地主は、戸籍法上の利害関係人として認められれば、借地権者の戸籍謄本を取得できる場合もあります。
まずは、出生から死亡までの戸籍を追い、
- 配偶者や子がいないか
- 兄弟姉妹、甥姪などの法定相続人が存在しないか
を一つずつ確認していきます。
相続人が判明した場合には、その相続人に対して、
- 借地上建物の解体
- 借地権の返還や譲渡
- 今後の整理方針についての協議
といった対応を正式に依頼することになります。
契約書がなくても、交渉や整理が可能なケースはある
古い借地では、
そもそも借地契約書が見当たらない
というケースも少なくありません。
この場合でも、
- 地代の支払い履歴
- 固定資産税の課税状況
- 周辺事情や長年の利用実態
などを踏まえ、「借地関係が存在していた事実」を前提に実務が進められることもあります。
ただし、契約内容が不明確な分、無理な判断や独断での対応は、後のトラブルにつながりやすくなります。

相続人が見つからない場合に取られる法的手段
戸籍調査を尽くしても、相続人が見つからない、または全員が相続放棄しているというケースも実際に存在します。
その場合、最終的な手段として検討されるのが、相続財産清算人の選任申立てです。
これは家庭裁判所に申立てを行い、
- 相続人の代わりに財産を管理・清算する人を選任
- 借地上建物の処分や整理を進める
ための制度です。
ただし、この手続きは、
- 時間がかかる
- 予納金など一定の費用負担が必要
- 必ずしも希望どおりに進むとは限らない
といった現実的なハードルもありますので、費用・期間・リスクを理解したうえで判断する必要がある手段です。

まとめ|重要なのは「いきなり法的手段に進まないこと」
借地権トラブルでは、
- すぐに裁判
- すぐに解体
- すぐに契約解除
といった考えが、かえって問題を複雑化させることも少なくありません。
実務では、
- 現状整理
- 相続人探索
- 協議の余地があるかの確認
- それでも無理な場合に法的手段を検討
という段階的な整理が基本です。
制度や法律上の選択肢があっても、
- 現実的に費用負担できるか
- 本当にこの問題が解消できるのか
- これ以上状況を悪化させないか
を冷静に見極める必要があります。
相続人不明・築古空き家が残る借地権トラブルは、
- 放置しても自然には解決しない
- やり方を間違えるとトラブルが拡大する
- 早い段階の整理ほど、選択肢が多い
という特徴があります。
まずは状況を整理することから始めてみてください。

































