皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
過疎地の空き家や空き地の相談を受けていると、所有者の多くが口にされるのが、「せっかくお金をかけてきたのに、こんなに安く手放すなんて、もったいない」という言葉です。
しかし、この“もったいない”という感情こそが、損失を拡大させる最大のリスクになります。
それは、経済学では 「埋没コスト(サンクコスト)」と言い、すでに回収不能な過去の投資に、いまも判断を縛られてしまう状態です。
そこで本日は、過疎地の不動産で実際に起きた事例と、その背後にあるリスクについて話してまいります。
目次
実例|「2000万円かけた家が100万円?」という現実
50年前に200万円で土地を購入し、その上に2000万円をかけて家を建てた方。
その後も外壁塗装や屋根の修繕など、こまめに手を入れてこられました。
ところが、施設入居をきっかけに空き家となってから5年が経過し、庭には雑草が生い茂り、換気もされないまま建物の劣化が進んでいました。
家財もそのままの状態で、家の中には湿気とカビの臭いがこもっています。
買主側で家財処分や境界確定費用(約100万円)を負担する条件での買取提案をしましたが、「これまでにかけたお金を思うと、100万円では売れません」とお断りされました。
建物は経年により自然と劣化が進むうえ、換気・通水・維持管理が行われない空き家期間が続くほど、価値の低下は加速してしまいます。
結果的に、ご希望に沿えず残念でした。

埋没コストに縛られると、損失は雪だるま式に膨らむ
「これまでにかけた費用」を基準に判断してしまうと、実際の市場価値との乖離が広がり、結果として損失が増大します。
- 固定資産税や火災保険などの維持コスト
- 雑草・越境などの管理リスク
- 老朽化による解体・撤去費の増加
- 土地需要の低下による処分の困難化
時間が経つほど、これらの“目に見えない損失”が積み重なっていきます。

「損切り」は“損をすること”ではなく、“損を止めること”
金融の世界では、「損切り」とは“損失を限定して次のチャンスに備える”という考え方です。
不動産でもまったく同じことが言えます。
早めに手放すことで、
- 税金や維持費の負担から解放される
- 将来の解体費やトラブルリスクを回避できる
- 相続人への負担を残さずに済む
など、未来の損失を止める勇気ある選択が可能になります。

まとめ|“もったいない”を手放すことが、最大の防衛策
過疎地の不動産は、人口減少と需要縮小の流れの中で、時間とともに価値を失いやすい資産です。
だからこそ、早めの判断が重要になります。
これまでにかけたお金よりも、「これから増える負担」や「次の世代への影響」に目を向けることが大切です。
埋没コストに縛られず、「これからどうなるか」を基準に判断することこそ、将来の負担や損失を防ぐ最も確実な方法です。
































