皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
「実家は古くて誰も住まない。もう相続放棄して終わりにしたい。」
そんな声を最近よく耳にします。
しかし、相続放棄は“無料で不動産を手放せる制度”ではありません。
むしろ、負動産(売れない・使えない不動産)を抱えている場合ほど、放棄の手続きに大きな費用が発生することがあります。
それが「予納金」と呼ばれる、裁判所に前払いで納める清算費用です。
この予納金が100万円を超えるケースもあり、「放棄したいけれど払えない」という相談が各地で増えています。
「相続放棄をすればすべてが解決する」
そう思い込んでいると、後から思わぬ出費や手続きの壁に直面することがあります。
そこで本日は、相続放棄を検討する前に知っておきたい、負動産にかかる高額予納金の現実と注意点について話してまいります
目次
相続放棄にもお金がかかる?知られざる“予納金”の壁
「過疎地の実家を相続したくない」「空き家や荒れた土地を引き継ぐくらいなら相続放棄したい」
こうした相談は近年確実に増えています。
相続放棄をすれば負の遺産(=負動産)から解放される、と考える方が多いのですが、相続放棄にも費用がかかるのが現実です。
とくに売れない土地や老朽化した建物が含まれる場合、予納金という大きな負担が生じやすくなります。

相続放棄しても残る「財産の清算」という課題
被相続人(亡くなった方)の財産を一切引き継がないこと、それが相続放棄の基本です。
しかし、実際には「誰も相続しない財産」はそのまま放置できません。
全員放棄や相続人不存在等の場面では、家庭裁判所が「相続財産管理人(主に弁護士・司法書士)」を選任し、残された財産の管理・換価・債務弁済等の清算業務を行います。
その手続きのために必要となるのが、「予納金」です。
予納金とは?手続きに必要な「前払いの清算費用」
予納金は、相続財産管理人の報酬や、清算業務に伴う実費(官報公告費、現地調査、残置物撤去、測量、解体、登記手続 等)に充てる前払い費用です。
多くの場合、申立人(相続放棄を希望する方等)が立て替えます。
予納金の目安(あくまで一般例)
- 預貯金のみ:20〜30万円前後
- 空き家や土地を含む:50〜100万円程度
- 解体・残置物撤去・測量・境界整理を見込む:100〜200万円以上
過疎地の老朽空き家や境界が未確定の土地など、「処分が難しい負動産」を抱える相続放棄では、清算に要する費用が遺産の預貯金を上回ることも少なくありません。

なぜこんなに高い?負動産が清算を難しくする理由
相続財産管理人の業務は単なる「処分」にとどまりません。
現地調査/残置物撤去/境界確認/近隣調整/測量・解体手配/売却段取り/登記や公告など、多岐にわたります。
通常の不動産であれば、不動産会社や業者に一括で依頼して進めることもできますが、負動産の場合はそう簡単にはいきません。
さらに、過疎地の負動産には次のような特徴が重なりがちです。
- 建物が老朽化し、解体が前提
- 越境・境界未確定など権利関係が複雑
- 市場価格がつかず、売却益で費用を賄えない
老朽化が進んだ建物の解体や敷地の測量、残置物の撤去等を見込むと、予納金は100万円を超え、地域や状況によっては150〜200万円以上かかる場合もあります。

「放棄すれば終わり」ではない負動産の現実
多くの方が誤解していますが、相続放棄をすれば「不動産の問題がかんたんに終わる」わけではありません。
放棄しても、誰かがその土地や建物を整理しなければならないという現実は残ります。
予納金が支払えなければ、相続財産管理人が選任されず、登記名義は被相続人のまま放置されることになります。
その間に、雑草の繁茂や建物の倒壊などが発生すれば、実際には相続放棄を検討している相続人のもとへ行政や近隣から連絡が入ることもあります。
放棄後も、所有者情報が未更新のため、形式上は故人名義宛に行政文書が届くことがあり、結果的に相続人へ照会が来るケースもあります。

相続放棄と国庫帰属制度の費用を比較
| 項目 | 相続放棄(相続財産管理人を選任) | 相続土地国庫帰属制度 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 遺産全体を引き継がない(放棄) | 要件を満たす土地を国に引き取ってもらう |
| 主な費用 | 予納金(数十万〜200万円超も) | 負担金(原則20万円〜)+審査手数料 等 |
| 対象 | 財産・負債すべて | 土地のみ(建物は対象外、要件あり) |
| 手続期間 | 数ヶ月〜1年以上 | 目安6〜12ヶ月 |
| メリット | 借金も含めて放棄可能 | 不動産のみ切り分けて整理可能 |
| デメリット | 高額化・却下リスクあり | 要件不適合だと不可/建物は解体必須 |
※費用は目安です。地目・面積・現況・地域等により変動します。
結果として、ケースによっては「相続放棄+清算」よりも、「無償譲渡」や「国庫帰属制度」の方が費用対効果が高いこともあります。
“手放すにもお金がかかる”時代に
少子高齢化・空き家増加が進むいま、「相続すれば負担」「放棄しても費用」という二重苦が全国で広がっています。
負動産の整理には、相続放棄/国庫帰属/無償譲渡/売却など複数の出口があり、最適解は案件ごとに異なります。
だからこそ、「相続放棄=解決」と決めつける前に、現地調査と法的整理方針を早めに立てることが重要です。
これにより、費用と時間の無駄を大きく抑えられます。

まとめ|相続放棄で終わらせない、負動産の出口戦略を
相続放棄をすれば終わると思っていたのに、実際には予納金100万円超という現実に直面することもあります。
これは決して他人事ではありません。
負動産を放置すれば、次の世代にリスクと費用がそのまま引き継がれる可能性があります。
「放棄」「国庫帰属」「譲渡」「売却」、どの選択が最も合理的かを見極めるためにも、まずは専門家に相談し、現状を“見える化”することが第一歩です。


































