なぜ高知県の空き家は減らないのか|統計が示す「売れない構造」と負動産化の現実

空き家問題高知県

皆さま、こんにちは!

高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。

高知県は長年、空き家率の高さ・人口減少の速さ・不動産需要の弱さが全国的にみても際立っています。

しかし、「高知は田舎だから売れない」という感覚的な話だけではありません。

統計データそのものが、“流通しない不動産が積み上がっていく構造”を示しています。

そこで本日は、2024不動産業統計集(不動産流通推進センター)に掲載された「建物の売買による所有権移転登記個数」のデータをもとに、高知県で不動産が流通しにくい背景について話してまります。

高知県の空き家は78,700戸

2023年住宅・土地統計調査(総務省)によれば、高知県の空き家数は78,700戸、空き家率は 20.3%(全国5位) に達しています。

つまり、県内の住宅の5軒に1軒以上が空き家という、非常に深刻な状況です。

空き家売却高知県

一方、売買で動いた建物は「年間2,650件」しかない

2024不動産業統計集(不動産流通推進センター)に掲載された「建物の売買による所有権移転登記個数(高知県)」 は次の通りです。

年度件数
令和4年2,650件

これは、住宅だけでなく事務所・工場などを含む高知県全体の建物売買件数であり、新築住宅の件数は含まれていません。

つまり──

市場で実際に売れた物件は「2,650件
一方で空き家は「78,700戸

この圧倒的な差こそ、高知県の空き家問題の本質を端的に示しています。

空き家問題高知県

なぜこれほど“売れない構造”になっているのか?

以下が、高知県特有の要因です。

① 需要母数が全国屈指で小さい

高知県は人口64万8,313人(2025年4月1日現在)で、世帯数も伸びず、そもそも住宅を買う層が少ない。

特に若年層の人口減少が深刻で、住宅の需要が頭打ちになりやすい構造です。

② 中山間地・過疎地に空き家が集中している

高知県の住宅分布は全国でも特異です。

  • 生活インフラが弱い
  • 人口減少が急速に進んでいる
  • そもそも需要がない地域が広い

こうした地域の空き家は、

市場にすら乗らず、売買件数(登記統計の「売買」項目)には反映されない

という現象が起きます。

空き家問題高知県

③ 老朽化が進み、再生コストが買主負担を超える

高知県の空き家は、築40〜50年超が多数を占めています。

  • 設備の不具合
  • シロアリ被害
  • 雨漏り
  • 旧耐震構造

と、リフォームより建て替えのほうが安く済むケースも少なくありません。

空き家問題高知県

高知市周辺を除けば「売れる物件のほうが例外」という現実

数字を並べると、構造は一目瞭然です。

  • 空き家:78,700戸
  • 年間売買件数:2,650件

つまり、

30軒の空き家があっても、実際に動くのはわずか1軒です。

しかもこの件数には築浅や状態の良い物件も含まれるため、老朽空き家がどれほど売れにくいかは明らかです。

残りの多くは、市場に出る前に負動産化していきます。

この構造では、空き家が増え続けるのは当然の結果です。

空き家問題高知県

売却前提で考えない方が良い理由

高知県の現実を踏まえると、

“安ければ売れるはずだ”という思い込みこそが、もっとも危険な判断につながります。

実際には売却にこだわっているうちに、3年以上が過ぎてしまい、「もうどうにもならない」段階でご相談に来られる方も少なくありません。

だからこそ、最初から

  • 無償譲渡
  • 隣地調整
  • 相続土地国庫帰属制度
  • 解体+出口設計
  • 相続放棄前の整理

といった複数の出口を比較し、負担を最小化できる“現実的な選択肢”から検討することが重要です。

空き家問題高知県

まとめ|高知県の空き家が減らないのは、そもそも“売れにくい構造”の県だから

最新データはこう示します。

  • 空き家 78,700戸(全国5位)
  • 空き家率 20.3%(5軒に1軒以上が空き家)
  • 売買件数 2,650件/年(築浅や状態の良い物件含む)

この圧倒的なギャップが、高知県の空き家問題の深刻さそのものです。

だからこそ、

売却できるかどうかではなく、“どんな出口なら負担を減らせるか”を最初に考えることが最重要です。

このまま推移すれば、高知県の空き家は今後10年以内に10万棟を超える可能性があります。

空き家や相続予定の不動産については、早めに向き合うことが、将来の負担を減らす最善の方法です。

負動産処分高知県
ABOUT US
上田 司代表取締役/宅地建物取引士
相続した負動産で苦労した自身の経験を原点に、同じような悩みを抱える方の力になりたいとの想いから、2025年より、売却が難しい家や土地を専門に取り扱う「負動産整理」のサポート事業を開始しました。相続不動産を中心に、各分野の専門家と連携しながら、再生・無償譲渡・相続土地国庫帰属制度など、一つの方法に限定せず、複数の選択肢を整理したうえで、状況に応じた進め方をご案内しています。売却や処分を前提に話を進めることはありません。ご相談者様一人ひとりの事情やお気持ちに寄り添い、「どう整理するか」を一緒に考えることを大切にしながら、不動産の整理・処分を丁寧にサポートいたします。