高知県で、山林や農地をはじめ、相続後の扱いに困っている土地や、売却・処分が難しい「負動産」を専門としている福島屋代表の上田です。
相続が発生した後、多くの人が直面するのが「遺品整理」や「墓じまい」です。
これらは精神的な負担は大きいものの、手順やサービスが確立されており、時間と費用をかければ終わらせることができる問題です。
しかし、その後にほぼ確実に残るのが「不動産」です。
そしてこの不動産こそが、最も長期化し、最も解決が難しい問題になります。
そこで本日は、なぜ不動産だけが残り続けるのか、その構造を法的・実務的観点から話してまいります。
目次
遺品整理・墓じまいは「終わる問題」

遺品整理は、物理的なモノの処分です。
仕分け・廃棄・買取というプロセスが明確であり、専門業者の活用によって数日〜数週間で完了します。
墓じまいについても同様です。
寺院との調整や行政手続きは必要ですが、
- 改葬許可申請
- 墓石撤去
- 永代供養への移行
といった一連の流れが確立されており、ゴールが明確に存在する手続きです。
不動産だけが「終わらない問題」になる理由
一方で、不動産はまったく性質が異なります。
単なる「モノ」ではなく、権利・法律・地域制度が複雑に絡み合った存在です。
ここに、不動産整理が難しい本質があります。
① 法的に“所有し続ける義務”が発生する
不動産は、原則として所有権を放棄することができません。
相続した不動産は、
- 使っていなくても
- 価値がなくても
- 売れなくても
所有者である限り、以下の義務が継続します。
- 固定資産税の支払い
- 管理責任
- 近隣への損害防止義務
さらに、不動産を手放さない限り、次の代への相続登記という形で、負担は世代を超えて引き継がれていきます。
つまり、不動産は「持っているだけで責任が発生し続ける資産」です。
② 相続人全員の合意が必要になる
不動産は分割が難しいため、処分には原則として相続人全員の合意が必要です。
しかし実務では、
- 連絡が取れない相続人がいる
- 意見が対立する
- 判断を先送りする人がいる
といったケースが増えています。
その結果、何も決まらないまま放置される不動産が生まれます。
③ 売れない不動産が存在する

すべての不動産が市場で流通するわけではありません。
特に高知県では、
- 需要がない立地
- 老朽化した建物
- 再建築不可や接道義務などの法令制限
- 農地法の制限
など、そもそも買い手がつかない不動産が現実に存在します。
この場合、「売る」という選択肢自体が成立しません。
④ 行政も引き取らないという現実
「いらないなら国や自治体に返せばいい」と考える方も多いですが、現実は異なります。
自治体は固定資産税を重要な財源としていることに加え、不動産を引き取ることで管理責任も負うことになるため、それらを積極的に受け入れる仕組みにはなっていません。
近年では、2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」が創設されましたが、
- 建物がある土地は対象外
- 管理が困難な土地は対象外
- 面積や立地条件によっては高額な費用負担が生じる
など、利用には厳しい条件があります。
つまり、「不要だから手放したい」が成立しないのが不動産です。
⑤ 空き家条例・管理責任の強化
近年、各自治体では空き家対策が強化されています。
代表的なものとして、
- 管理不全空き家への指導・勧告
- 特定空き家指定による税負担増
- 行政代執行(建物の解体や樹木の伐採等の強制措置)
などがあります。
これにより、不動産は放置すればするほど、コストとリスクが増えていく構造になっています。
⑥ 感情と法律が衝突する領域
相続した不動産には、単なる“モノ”では片付けられない事情があります。
- 親が住んでいた家
- 思い出の詰まった場所
- 売ることへの心理的抵抗
こうした感情が判断を遅らせ、結果として問題を長期化させます。
しかし一方で、建物の劣化や草木の繁茂は、放置すればするほど進行します。
このギャップが、不動産問題をさらに複雑にします。
不動産問題の正体とは

ここまで整理すると、不動産問題の本質は明確です。
それは、手放せないのに、持ち続ける負担だけが増え続ける構造です。
遺品整理や墓じまいが「終わらせるための作業」だとすれば、不動産は「終わらせるための出口が見えにくい問題」です。
なぜ最後に残るのか
結論として、不動産が最後に残る理由は2つに集約されます。
- 法的に自由に処分できない
- 市場で処理できない場合がある
この2つが同時に存在するため、他の整理が終わった後に“問題として浮き上がる”のです。
まとめ|なぜ不動産だけが最後に残るのか
相続後に発生する問題の中で、
- 遺品整理は「物理的な整理」
- 墓じまいは「制度化された手続き」
であるのに対し、不動産は「法律・市場が絡み合う複合問題」です。
だからこそ、最も後回しにされ、そして最も解決が難しくなります。
不動産をどう扱うかは、単なる処分の話ではなく、相続全体の設計に関わる重要なテーマです。
目の前の整理が一段落したとき、初めてその重さに気づくケースは少なくありません。





























