皆さま、こんにちは!
高知県で相続不動産や空き家、売却・処分が難しい負動産を専門に扱う、福島屋代表の上田です。
「不動産だけは、正直相続したくない」
相続の相談を受けていると、こうした声を聞くことは決して珍しくありません。
過疎地にある老朽化した空き家、足を運んだこともない山林、利用予定のないまま放置されている農地など、不動産がいつの間にか「資産」ではなく「負担」と感じられてしまう状況は、決して特別なことではありません。
その結果として、多くの方が真っ先に思い浮かべるのが「相続放棄」です。
そこで本日は、不動産を相続したくないと感じている方に向けて、相続放棄を選ぶ前に知っておいてほしい相続前整理の考え方について話してまいります。
目次
相続放棄をすると「負動産だけ」では済まない
相続放棄をすると、放棄の対象になるのは不動産だけではありません。
- 現金・預金
- 株式・投資信託などの有価証券
- 生命保険以外のプラスの財産
これらすべてを含めて相続権そのものを放棄することになります。
「不動産はいらないけれど、預金は引き継ぎたい」
そう思ってしまうのはごく自然な感覚ですが、相続放棄では残す財産と手放す財産を分けて選ぶことはできません。
だからこそ本来、相続放棄は“他に選択肢が残されていない場合の最終手段”として考えるべきものです。

贈与税がかかっても「プラスの財産だけを受け取る」選択肢
相続放棄以外にも、検討できる選択肢があります。
そのひとつが、生前贈与を活用する方法です。
例えば、
- 現金や預金など、引き継ぎたいプラスの財産だけを生前贈与で受け取る
この場合、相続時精算課税制度(2,500万円まで)を利用したとしても、贈与税が発生する可能性があります。
しかし、
- 不動産という長期的な負担を回避できる
- 相続放棄によってすべてを失う事態を防げる
といった点を考えると、結果的に合理的な判断になるケースも少なくありません。

相続前に不動産を整理するという考え方
「相続前に不動産を処分するなんて、そんなに簡単なのか?」
そう感じる方も多いと思います。
確かに、すべての不動産がすぐに片付くわけではありません。
しかし実際には、
- 売却
- 無償譲渡
- 隣地所有者への引き渡し
など、売却と売却以外の整理方法を組み合わせることで、相続前に負担を軽くできる可能性は十分にあります。
特に、半年から1年程度の時間が確保できれば、
- 状況整理
- 選択肢の比較
- 実行
まで進められ、状況が整えば、相続が始まる前に整理が完了するケースも見られます。

相続放棄を急がなくていい理由
不動産を相続したくないと感じること自体は、ごく自然な考えです。
むしろ、将来を見据えた、とても現実的な感覚です。
ただし、
- 状況を把握しないまま
- 他の選択肢を知らないまま
- 「もう放棄しかない」と思い込んだまま
相続放棄を選ぶことで、本来守ることができたプラスの財産や、他の選択肢まで失ってしまうこともあります。
相続放棄は、「整理を尽くしたあとでも遅くありません」。

まとめ|「放棄するかどうか」を決める前に、整理という選択を
不動産を相続したくないと感じたとき、いきなり「相続放棄するかどうか」を決める必要はありません。
- 相続放棄をすると、プラスの財産もすべて放棄すること
- 生前贈与で、引き継ぎたい資産だけを受け取る方法があること
- 相続前に不要な不動産を整理・処分するという選択肢があること
これらを知ったうえで、放棄するか、整理して相続するかを選ぶ。
それが、後悔しない判断につながります。
いずれにしても、相続放棄には期限があります。
被相続人がご存命で、話し合いができる状況であれば、できるだけ早い段階から行動に移すことが大切です。
不動産の相続に悩んでいる方は、まずは「放棄するかどうか」ではなく、整理という視点で一度、状況を見直してみてください。


































