皆さま、こんにちは!
高知県で、山林や農地をはじめ、相続後の扱いに困っている土地や建物、売却・処分が難しい「負動産」を専門としている福島屋代表の上田です。
不動産を売却するなどして、現在の所有者から次の所有者へ所有権を移す場合、原則として「権利証」または「登記識別情報」が必要になります。
これは、数百万円、数千万円で売買される土地や建物だけの話ではありません。
例えば、長年買い手が見つからず、1円という実質無償に近い価格で売買する土地や建物であっても同じです。
ほとんど市場価値のない山林や原野、老朽化した空き家であっても、現在の所有者から次の所有者へ所有権を移すのであれば、原則として権利証または登記識別情報が必要になります。
ここで、
- 運転免許証があるのだから本人だと分かるのではないか
- マイナンバーカードも印鑑証明書もある
- 登記上の住所と住民票の住所も同じなのに、なぜ権利証まで必要なのか
と疑問に思われる方もいると思います。
特に、所有者自身が処分に困っている、1円で譲渡するような土地や負動産であれば、なおさら疑問に感じるかもしれません。
そこで本日は、不動産売却や不動産整理において、なぜ権利証・登記識別情報が必要になるのか、1円で売買する土地や空き家などを例に話してまいります。
権利証・登記識別情報とは

一般的に「権利証」と呼ばれているものは、正式には「登記済証」といいます。
2005年(平成17年)に施行された新しい不動産登記法により、従来の登記済証に代わる「登記識別情報」の制度が導入され、その後、順次移行しました。
登記識別情報は、12桁の英数字などを組み合わせた符号で、不動産と登記名義人ごとに定められます。
権利証や登記識別情報は、所有権移転登記などを行う際に、その登記が登記名義人本人からの申請であることを確認するために使用されます。
つまり、単に「この人が誰なのか」を確認するだけではなく、
を確認するための重要な情報です。
免許証やマイナンバーカードがあっても必要になる理由

例えば、登記上の所有者が、
- 高知市○○町○番○号 高知太郎
となっていたとします。
運転免許証にも、
- 高知市○○町○番○号 高知太郎
と記載されています。
マイナンバーカードや印鑑証明書などによっても、同じ氏名と住所が確認できたとします。
これだけ揃っていれば、「高知太郎本人であることは分かるのだから、権利証はいらないのではないか」と思うのも自然です。
しかし、運転免許証やマイナンバーカードによる本人確認と、登記識別情報による本人確認は役割が異なります。
運転免許証やマイナンバーカードは、その人物が高知太郎本人であることを確認するものです。
一方、登記識別情報は、
そのため、運転免許証、マイナンバーカード、住民票、印鑑証明書などによって住所や氏名が一致していても、それだけを理由に登記済証や登記識別情報が不要になるわけではありません。
不動産整理は「売却できるか」だけを考えるものではない

ここからは、福島屋が行っている不動産整理の話になります。
一般的な不動産会社であれば、
が大きな判断材料になります。
しかし、福島屋は、通常の不動産市場では売却が難しく、所有者が処分に困っている不動産の整理を専門としています。
不動産整理では、所有している不動産について、低廉譲渡、贈与、寄付、相続土地国庫帰属制度など、その不動産に適した整理方法を検討します。
例えば、
- 1円などの低廉な価格で譲渡する
- 近隣で必要としている人に無償で譲渡する
- 条件を満たす場合には相続土地国庫帰属制度を利用する
などです。
不動産によって適した整理方法は異なります。
そのため、不動産整理で重要なのは、
という視点です。
そして、低廉譲渡、贈与、寄付などによって現在の所有者から第三者へ所有権を移すことになれば、所有権移転登記が必要になります。
そこで権利証や登記識別情報が関係してきます。
1円の山林でも権利証・登記識別情報は原則必要

福島屋では、通常の不動産市場では買い手が見つからず、1円などの低廉な価格で山林の引継ぎ先を探すことがあります。
このような山林について、
- 1円なのだから権利証までは必要ないのではないか
と思われる方もいるでしょう。
しかし、売買価格が1円であっても、現在の所有者から次の所有者へ所有権を移転するのであれば、原則として権利証または登記識別情報が必要になります。
不動産登記制度には、
- 1,000万円の宅地だから必要
- 1円で売買する山林だから不要
という区分はありません。
売買価格によって、登記名義人本人からの申請であることを確認する必要性がなくなるわけではないからです。
宅地、山林、田、畑、原野、墓地、雑種地でも同じ

不動産の地目によって不要になるものでもありません。
例えば、
- 宅地
- 山林
- 田
- 畑
- 原野
- 墓地
- 雑種地
など、不動産にはさまざまな地目があります。
しかし、売買などによって所有権を移転する場合の本人確認について、
ということはありません。
山奥にある山林であっても同じです。
不動産の市場価値や地目と、所有権移転登記における本人確認は別の問題です。
なお、田や畑などの農地を売買・贈与する場合には、所有権移転登記とは別に農地法上の許可などが必要になることがあります。
ただし1円で売買する不動産と数千万円の不動産では経済的なリスクが違う

本人確認が必要であることと、不動産取引に伴う経済的なリスクの大きさは同じ話ではありません。
例えば、市場価値が5,000万円ある土地について、所有者になりすました第三者が勝手に所有権を移転しようとしていたとします。
もし本人確認を誤れば、極めて大きな損害につながります。
一方、
- 買い手が見つからない
- 利用する予定もない
- 固定資産税や維持管理だけが負担になっている
- 無償でもよいから手放したい
という土地を、所有者本人の意思によって1円で次の所有者へ引き継ぐ場合では、本人確認を誤った場合に生じる財産的な影響の大きさは、数千万円の不動産とは大きく異なります。
もちろん、だからといって1円の土地なら本人確認を省略してよいということではありません。
必要な本人確認は行います。
1円売買でも不動産そのものの価値を確認する
1円で売買する場合でも、対象となる不動産の価値や状況を確認することは重要です。
不動産の価値や性質は、所在地、地目、地積、固定資産税評価額、建物の状況、接道状況、周辺の取引事例などから、ある程度判断できます。
福島屋が扱う1円物件は、通常の不動産市場では買い手が見つからず、所有者が処分に困っている不動産について、その状況を確認したうえで、1円での売買を整理方法の一つとして検討するものです。
権利証が見つからないこともある

福島屋が扱う不動産では、「権利証がどこにあるのか分からない」ということがあります。
例えば、
- 何十年も前に取得した山林
- 長期間利用していない農地
- 現在は誰も住んでいない空き家
などです。
比較的最近取得した不動産であれば、所有者が権利証や登記識別情報を大切に保管していることが多いと思います。
一方、何十年も前に取得した山林や農地などでは、取得してから長い年月が経過し、権利証をどこに保管したのか分からなくなっていることがあります。
そして、不動産を整理しようとした段階になって初めて、「権利証がない」という問題が出てきます。
権利証を紛失しても所有権移転はできる
権利証や登記識別情報を紛失していても、不動産の所有権移転はできます。
ただし、紛失した権利証や登記識別情報を再発行してもらうことはできません。
そのため、権利証や登記識別情報を提供できない場合には、別の方法によって登記名義人本人であることを確認します。
代表的な方法として、
- 司法書士による本人確認情報
- 法務局による事前通知
があります。
司法書士による本人確認情報

権利証や登記識別情報を提供できない場合には、司法書士が本人確認を行い、「本人確認情報」を作成する方法があります。
司法書士は登記名義人本人と面談し、本人確認資料などを確認したうえで、本人確認情報を法務局へ提供します。
本人確認情報の作成には司法書士としての責任が伴うため、権利証や登記識別情報がない所有権移転では慎重な確認が行われます。
権利証を紛失すると費用負担が増えることがある

司法書士に本人確認情報の作成を依頼する場合には、通常の司法書士報酬とは別に、本人確認情報の作成費用が必要になります。
特に1円で売買する不動産では、売買価格よりも登記に必要な費用の方が高くなります。
そのため、現在は売却や処分を考えていない不動産であっても、権利証や登記識別情報は大切に保管してください。
将来、不動産を整理するときの手続きや費用負担を減らすことにつながります。
法務局による事前通知という方法もある

権利証や登記識別情報がない場合、必ず司法書士による本人確認情報を利用しなければならないわけではありません。
法務局による「事前通知」という制度もあります。
登記識別情報を提供できない所有権移転登記などでは、登記官から登記義務者に対して通知を行い、原則2週間以内に申出をすることで、その登記申請が本人の意思によるものであることを確認します。
事前通知であれば、司法書士による本人確認情報の作成費用は必要ありません。
そのため、1円売買など費用をできるだけ抑えたい不動産整理では、本人確認情報を作成する方法ではなく、事前通知が選択されることもあります。
まとめ|権利証の確認も不動産整理の一つ

権利証や登記識別情報というと、高額な住宅や土地を売却するときに必要になるものというイメージがあるかもしれません。
しかし、売却や低廉譲渡、贈与などによって、現在の所有者から次の所有者へ所有権を移すのであれば、不動産の価値にかかわらず、原則として権利証または登記識別情報が必要になります。
一方、権利証や登記識別情報を紛失していても、所有権移転はできます。
その場合には、法務局による事前通知や、司法書士による本人確認情報という方法があります。
権利証や登記識別情報の有無も、不動産整理における大切な確認事項です。














































