皆さま、こんにちは!
高知県で、山林や農地をはじめ、相続後の扱いに困っている土地や建物、売却・処分が難しい「負動産」を専門としている福島屋代表の上田です。
福島屋には、一般的な不動産市場では買い手が見つからず、「タダでもいいから手放したい」という土地や建物のご相談が寄せられます。
このような売却や処分が難しい不動産について、福島屋では、売買代金を1円とする「1円売買」を主に扱っています。
ここで疑問に思われるのが、1円で売るくらいなら、0円で贈与すればいいのではないかという点です。
しかし、不動産の贈与と売買では、契約の性質だけでなく、税金や登記の取扱いも異なります。
そこで本日は、福島屋が主に扱っている不動産の1円売買について、贈与との違いや税金、1円物件を取引する際に注意すべき点、福島屋で作成している「低廉売買理由書」について話してまいります。
1円売買と贈与は何が違うのか

不動産を相手に無償で譲る場合は「贈与」です。
一方、売主と買主が売買契約を締結し、買主が代金を支払って不動産を取得する場合は「売買」です。
そのため、売買代金が1円であっても、当事者双方が売買として合意し、売買契約を締結して代金を支払うのであれば、契約としては売買となります。
ただし、ここで注意しなければならないことがあります。
- 売買契約書に「売買代金1円」と記載すれば、その不動産の価値が税務上も1円になるわけではありません
個人から個人へ著しく低い価格で財産を譲渡した場合には、その財産の時価と実際に支払った金額との差額について、贈与により取得したものとみなされる場合があります。
そのため、本来相応の市場価値がある不動産を、特別な理由もなく1円で売買した場合に、
- 1円で売買したから贈与ではない
と単純に判断することはできません。
1円売買では、なぜその不動産が1円という価格になったのか、その理由を明確にすることが重要です。
贈与税には110万円の基礎控除がある

個人から個人へ不動産を贈与する場合には、贈与税について確認する必要があります。
暦年課税の場合、原則として、その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計額から110万円の基礎控除を差し引いて贈与税を計算します。
例えば、贈与税の計算上の価額が100万円の土地を贈与され、その年にほかの贈与がない場合には、110万円の基礎控除の範囲内となるため、原則として贈与税はかかりません。
一方、贈与税の計算上の価額が500万円であれば、
- 500万円-110万円=390万円
が基礎控除後の課税価格となり、この金額を基に贈与税を計算します。
ただし、ここで注意したいのが、贈与税を計算するための評価額と固定資産税評価額は必ずしも同じではないということです。
そのため、
- 固定資産税評価額が100万円だから、110万円の基礎控除以下なので贈与税はかからない
と単純に判断することはできません。
土地の贈与税評価額は、原則として相続税評価の方法により算定します。
市街地などでは路線価を基に評価する「路線価方式」、路線価が定められていない地域では固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける「倍率方式」などが用いられます。
そのため、固定資産税評価額と贈与税の計算上の評価額が同じになるとは限りません。
贈与税がかからなくても登録免許税はかかる

贈与税が0円であれば、不動産を取得するときの税金もすべて0円になると思われる方もいるかもしれません。
しかし、贈与税と登録免許税は別の税金です。
不動産の所有権を移転して登記する際には、登録免許税が必要になります。
土地の所有権移転登記については、現在、
- 贈与の場合 2%
- 売買の場合 1.5%
となっています。
土地の売買による1.5%の税率は軽減措置によるもので、現在は令和11年3月31日まで適用されることになっています。
そして重要なのは、登録免許税が実際の売買代金をそのまま基準として計算されるわけではないことです。
固定資産課税台帳に価格が登録されている場合には、原則としてその価格を基礎として計算します。
そのため、1円物件を1円で購入したからといって、登録免許税も1円を基準に計算されるわけではありません。
固定資産税評価額500万円の土地の場合
分かりやすく、固定資産税評価額500万円の土地について、その500万円が登録免許税の課税標準となる場合を考えてみます。
贈与の場合
500万円 × 2% = 10万円
売買の場合
500万円 × 1.5% = 7万5,000円
となります。
同じ土地でも、贈与による所有権移転と売買による所有権移転では、登録免許税に違いがあります。
ただし、この登録免許税の差だけを理由として1円売買を行うわけではありません。
1円売買が適切かどうかは、その不動産の市場性や状態、権利関係、取得後に買主が負担する費用などを含めて考える必要があります。
固定資産税評価額100万円の土地の場合
同じように、固定資産税評価額100万円の土地について、その100万円が登録免許税の課税標準となる場合は、
贈与の場合
100万円 × 2% = 2万円
売買の場合
100万円 × 1.5% = 1万5,000円
となります。
ここで注意したいのが、先ほど説明した贈与税の「110万円の基礎控除」との違いです。
贈与税の基礎控除と、登録免許税の計算に使用する固定資産税評価額は、まったく別の制度です。
そのため、
- 固定資産税評価額が100万円だから、110万円以下なので贈与税もかからない
とは限りません。
それぞれの税金について、何を基準として計算するのかを分けて考えることが重要です。
不動産取得税は贈与でも売買でもかかる

不動産取得税は、土地や建物を売買によって取得した場合だけでなく、贈与によって取得した場合も原則として課税されます。
また、不動産取得税についても、実際の売買価格をそのまま基準として計算するわけではありません。
原則として、取得した不動産の固定資産課税台帳に登録されている価格を基に計算されます。
そのため、1円物件を1円で購入したからといって、不動産取得税も1円を基準に計算されるわけではありません。
例えば、売買価格が1円であっても、固定資産税評価額が500万円の土地であれば、原則としてその評価額を基に不動産取得税が計算されます。
一方で、不動産取得税には一定の免税点があり、土地については課税標準となる額が10万円未満の場合には課税されません。
福島屋が扱う山林や農地などには、固定資産税評価額が非常に低い土地もあるため、1円物件であっても、不動産取得税がかかる物件とかからない物件があります。
また、土地や住宅については、一定の要件を満たす場合に課税標準や税額の軽減措置が適用されることがあります。
そのため、1円売買では、表面的な売買価格だけではなく、買主がその不動産を引き継ぐことでどのような負担やリスクを負うことになるのかまで確認することが重要です。
なぜ福島屋では1円売買を主に扱っているのか

福島屋が扱う1円物件には、
- 建物の解体費用が土地価格を上回る空き家
- 法令上の制限や権利関係などにより、売却や利用が難しい不動産
- 固定資産税や草刈りなどの管理負担が続いている土地
- 一般的な不動産市場では流通しにくい山林や農地
などがあります。
このような不動産では、固定資産税評価額が高くても、実際の市場では買い手が見つからないことがあります。
一方、買主も1円を支払えば終わりというわけではありません。
取得後には、
- 固定資産税
- 維持管理費
- 建物の修繕費
- 建物の解体費
- 残置物の処分費
- 登記費用
- 測量や境界確認に必要となる費用
- 法令上の制限・権利関係を整理するための費用
などが発生する可能性があります。
売主にとっては、1円という売買代金を得ることよりも、今後の管理や費用負担から離れ、将来の相続に負動産を残さないことに意味がある場合があります。
一方、買主は1円で取得する代わりに、その不動産に伴う将来の負担やリスクを引き受けることになります。
こうした事情を双方が理解したうえで合意した結果として、1円売買が成立することがあります。
1円売買だから贈与の問題がなくなるわけではない

1円売買を行う際に注意しなければならないのが、いわゆる「みなし贈与」です。
個人から著しく低い価額で財産を取得した場合には、時価と実際に支払った金額との差額について、贈与により取得したものとみなされる場合があります。
そのため、
- 贈与税がかからないようにするため、形式上1円で売買すればよい
というものではありません。
一方で、法令上の制限や権利関係によって売却や利用が難しい、建物の解体費用が土地価格を上回る、利用するために多額の費用が必要になるなど、その不動産が抱えている問題によって、無償でも引き取り手が見つからず、実質的には所有すること自体が経済的・精神的な負担となっている不動産もあります。
だからこそ1円売買では、
- なぜ一般市場で売却することが難しいのか
- 買主がどのような負担やリスクを引き受けるのか
- なぜ売主と買主が1円という売買価格で合意したのか
という点を整理しておくことが重要です。
福島屋では低廉売買理由書を作成しています

福島屋では、1円物件の売買に際して「低廉売買に関する理由書」を作成しています。
これは、低廉売買理由書を作成すれば、税務上必ず1円という価格が認められるというものではありません。
また、税務署などの判断を拘束する書類でもありません。
低廉売買理由書を作成する目的は、なぜその不動産が1円という極めて低い価格で売買されることになったのか、その時点で確認できた事実と価格決定の経緯を記録しておくことです。
実際に福島屋で作成した低廉売買理由書では、
- 借地権の内容が確認できない
- 借地権を買主が承継できるか確認できていない
- 建物の解体費用が土地価格を上回る
- 一般市場での流通性が著しく低い
- 売主にも福島屋への仲介手数料や登記費用などの負担が発生する
- 買主には取得後の維持管理や修繕などの負担が見込まれる
などの事情を整理しています。
低廉売買理由書では、単に「売れない不動産だから1円にした」とするのではなく、なぜ売却が難しいのか、買主がどのような負担を引き受けるのかなど、1円という価格に至った事情を具体的に残しておくことが重要です。
1円売買でも契約や重要事項の説明を省略しない

1円物件だからといって、契約まで簡単に済ませてよいわけではありません。
むしろ、1円物件には通常の不動産とは異なる問題や負担があることも多いため、売主と買主がその内容を十分に確認したうえで売買することが重要です。
福島屋では、売買価格が1円であっても売買契約書を作成します。
また、宅地建物取引業法上、重要事項説明が必要となる取引については、重要事項説明書を作成し、契約前に必要な説明を行います。
宅地建物取引業法では、宅地・建物の取引について契約前の重要事項説明が定められており、契約成立後には契約内容を記載した書面を交付することが定められています。
売買価格が1円だからといって、これらの手続きが簡略化されるわけではありません。
価格が安いことと、その不動産を取得することによって生じる責任や負担は別の問題です。
山林や農地でも同じ水準で調査・説明する

福島屋では、山林や農地など、取引の内容によって宅地建物取引業法の適用対象とならない土地を扱うこともあります。
ただし、宅地建物取引業法の適用対象外だから、調査や説明を簡単にしてよいとは考えていません。
山林であれば、
- 現地の位置や進入経路
- 道路との関係
- 森林法などの法令上の制限
- 樹木や管理の状況
- 境界や隣接地との関係
などを確認する必要があります。
農地であれば、
- 農地法上の手続き
- 農地転用の可能性・必要な手続き
- 農業振興地域などの指定状況
- 接道や進入経路
- 耕作状況
- 取得後の利用に関する制限
など、その土地特有の確認事項があります。
そのため福島屋では、宅地建物取引業法の適用対象とならない山林や農地の取引についても、宅地・建物の取引に準じた水準を目安として、対象不動産について必要な調査を行い、確認できた事項や注意すべき事項を書面に整理して説明することを基本としています。
なお、登記上の地目が「山林」や「田」「畑」「原野」であれば、必ず宅地建物取引業法の適用対象外になるというわけではありません。
現に建物の敷地となっている場合や、建物の敷地にする目的で取引される場合などには、地目や現況にかかわらず宅地建物取引業法上の「宅地」に該当することがあります。
そのため、個々の取引について宅地建物取引業法の適用の有無を確認したうえで対応する必要があります。
「1円物件」は価値が1円という意味ではない

不動産には、
- 実際の売買価格
- 固定資産税評価額
- 相続税や贈与税を計算する際の評価額
など、目的の異なる複数の価格があります。
1円というのは、あくまで売買価格です。
1円で取得できたとしても、取得・保有に伴う税金や管理費、修繕費、将来の解体費などの負担まで小さくなるとは限りません。
そのため、1円物件を取得する際には、表面的な売買価格だけではなく、その不動産を引き継ぐことでどのような負担やリスクが生じるのかまで確認することが重要です。
まとめ|1円売買では「なぜ1円なのか」が重要

福島屋では、一般的な不動産市場での売却や処分が難しい不動産について、1円売買を主に扱っています。
ただし、1円売買は「贈与だと税金がかかるから行う」という単純なものではありません。
登録免許税や不動産取得税などの負担が生じる場合があり、著しく低い価格での売買では、みなし贈与についても注意が必要です。
一方で、法令上の制限や権利関係、解体費用、維持管理費などの負担により、無償でも引き取り手が見つからない不動産もあります。
だからこそ1円売買では、「なぜ1円なのか」を明確にし、売主・買主双方がその不動産の問題や将来の負担を理解したうえで取引することが重要です。
また、1円物件だからといって、調査や契約を簡略化してよいわけではありません。
必要な調査・説明を行い、その内容を記録として残しておくことが重要です。













































